独断と偏愛の映画紹介

ブラック・フォン

【作品情報】2022年　アメリカ　監督：スコット・デリクソン

【あらすじ】

コロラド州デンバーに住むフィニーは学校ではいじめられ、家庭では父親の癇癪に怯えて暮らしていた。妹のグゥエンは気丈な性格で、母譲りの遠隔で起きていることを夢で見ることができる能力があった。

街では少年が誘拐される事件が相次いで発生していた。フィニーは帰宅途中、黒いバンの男に誘拐される。気が付くと、薄汚い地下室に監禁されていた。

地下室には黒電話が設置されており、被害者の少年たちがフィニーに語りかける。

グゥエンは夢の力でフィニーを探そうとする。

フィニーは誘拐犯グラバーから逃げ出すことができるのか。

【見どころ】

監禁された薄暗い地下室からのスリリングな脱出劇。タイトルの「黒電話」がキーになっており、殺害された少年たちがフィニーに脱出方法を伝えてくる。いい線までいくのに、どうにかなりそうでどうにもならない密室系スリラーだ。

特殊な夢を見るグゥエンの能力は彼を助けることができるのか、ラストまでハラハラする展開に目が離せない。

【ネタバレ感想】

年代をスマートフォンが無い1978年に設定したのは黒電話をモチーフにしたからなのか、と納得した。物語は非常にシンプルで目的は地下室からの脱出だ。大きなフラグだったロビンとの友情が最後に効いてくる。

暗い地下室を舞台に、殺害された少年たちのアイデアが炸裂するがどれも今一歩。最後のロビンのアドバイスで黒電話が使えなくなるのがうまいと思った。

監禁男のグラバーが不気味で、「羊たちの沈黙」を思わせる。この時代のアメリカではこういう暗い事件が多かった背景があるのだろうか。グラバーのキャラクターがもっと描かれていても良かったかもしれない。

フィニーがいじめられっこのひ弱そうな少年だが、電話のアドバイスを実行する姿は頼もしく、応援したくなった。顔立ちがとても綺麗な俳優さん。

作中で「悪魔のいけにえ」や「燃えよドラゴン」のタイトルが出てきたのも時代を感じた。「悪魔のいけにえ」を観るシーンがある映画を観たことがある。そのくらいこの作品は強烈なアイコンだったのだろう。

派手な予算の映画ではないのだろうが、映像は上品で堅実な作りの作品だと感じた。良質で面白い作品だと思う。