インディ・ジョーンズと運命のダイヤル

【作品情報】2023年 アメリカ 監督:ジェームズ・マンゴールド


【あらすじ】

 世界的な考古学者インディ・ジョーンズは、ナチスが略奪した遺物を運ぶ列車から「アンティキティラのダイヤル」を手に入れる。

 時は流れ、遺物を求めて世界を冒険したインディは70歳。教授職定年の日を迎えていた。世の中はアポロ計画の月面着陸成功で祝賀ムードに湧き、インディは最後の授業を虚しく終える。

 カフェバーで旧友バジルの娘、ヘレナと再会し「アンティキティラのダイヤル」を探しに行こうと誘われる。ダイヤルを狙う元ナチスの科学者フォラーがダイヤルを奪い返そうと暗躍し始める。


【見どころ】

 ナチスによる遺跡の盗掘から始まり、略奪品を積み込んだ列車が走り始める。冒頭から絶好調の興奮アクション、サービス満載で立て続けに魅せてくれる。インディを演じるハリソン・フォードは御年80歳だが、デジタル技術を使い若いインディが走り回る様子に往年のファンは感激するだろう。

 ストーリーは「アンティキティラのダイヤル」を巡る謎を追いながら元ナチスにも追われるシンプルな冒険活劇で、美人で豪快なパートナーヘレナと彼女の相棒のしたたかな少年もキャラクターも良い。敵役のフォラーはイケオジ代表マッツ・ミケルセン。知的で冷酷、しかし血の通う演技が良かった。

 最初から最後まで飽きさせない派手なアクションはこれまでのシリーズに一切の引けを取らない。劇場で観ないと損!


【感想】※ネタバレ含

「インディ・ジョーンズ」シリーズは大好きな映画作品のひとつ。インディのキャラクターと考古学×アクションという題材も最高で、毎回のゲストキャラも非常に魅力的だ。あの若々しくてワイルド、セクシーだったハリソンフォードもなんと80歳。それがインディを演じるというから驚きと正直心配があった。

 CGやスタントを使って残念な出来になるのでは、と思っていた。しかし、本作はそんな心配などぶっ飛ばしてくれる最高のエンタメ作品だった。


 実際、CGやスタントを使ってはいるが、老境のインディの悲哀や苦悩を綿密に描いており、これまでの若きインディの冒険を見てきたファンの胸に刺さったことだろう。ラストシーンもまだ冒険を諦めないというメッセージに、映画は終わりだがインディの冒険は続くという明るい気持ちになれた。


 今回の敵役マッツは知的な悪役という今風のキャラで、ナチスとしてヒトラーを妄信するのではなく、間違いを認めて正すという目的にしたのはよく考えてあると感心した。無慈悲に人を撃つ冷酷さ、研究に関しては熱心な科学者という矜持があり、歪んではいるが祖国への愛情もあるリアルなキャラクターだった。


 これまで字幕と吹き替えで二度観に行ったが、伏線が非常に丁寧に張られていることに気が付く。シンプルなシナリオだが、そうした細やかさが分かるとさらに面白く鑑賞することができた。


 インディがアルキメデスと出会い、「この時代に残る」と言ったときには一抹の寂しさを感じた。インディが現代で居場所を失い、過去に埋もれて死ぬという選択をしたことに老いを感じずにはいられなかった。

 しかし、ヘレナのパンチでまさに目が覚めただろうか。この瞬間、心底ホッとしたのを覚えている。


 マリオンは一作目の「レイダース」で登場した恩師の娘で「クリスタルスカルの王国」に再登場した。今作では冒頭で別居することになっていたが、ラストで再び戻ってきてくれた。またケンカをしながらも最後まで添い遂げて欲しい。彼女の愛嬌あるまるい瞳はおばあちゃんになっても本当に可愛らしくて、好きな女性だ。


 インディは本作で最後という。ショート・ラウンドの言葉を呟こう。

「大好きだよ、インディ」

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