【作品情報】2022年　アメリカ　監督：ジョセフ・コシンスキー

【あらすじ】

ピート・ミッチェル大佐ことマーヴェリックは昇進を拒み、砂漠で隠居生活をしながら「ダーク・スター」のテストパイロットを務めていた。無人機の開発に追いやられそうな計画とチームメンバーを守るため、テスト目標をクリアしたマーヴェリックだが、無理な操縦のために機体を破壊してしまう。

マーヴェリックには新しい任務として、ノースアイランド海軍基地での教官を言い渡された。

目的は海軍の中でも優秀な若手パイロットを短期間で育て、ならず者国家の計画を阻止すること。マーヴェリックはかつての親友で事故で死んだグースの息子ルースターに再会する。

計画はあまりにも困難で、訓練は過酷を極めた。

そして、いよいよ決行の日がやってくる。

【見どころ】

初代「トップガン」を観ているファンにとっては、胸熱な演出がふんだんに盛り込まれている。冒頭の数分間で、感動に打ち震えるほどのサービス具合だ。

ストーリーは非常にシンプルで、スピード感のある映像と展開が怒濤のように押し寄せて、最後まで飽きさせない。頭を空っぽにして観られる８０－９０年代娯楽作品を良い意味で踏襲しているといえる。

トム・クルーズ演じるマーヴェリックが年を重ねた姿、苦悩する演技も素晴らしい。年相応に素敵な女性と恋をする姿も応援したくなった。

また、グースの死に対する負い目を感じ続けてきたマーヴェリックが彼の息子のルースターとのやりとりの中で心境が変化する様も見どころのひとつ。

最高に興奮して泣ける、映画館でぜひ観たい作品。

【感想】※ネタバレ含

もう最高ですね。初代「トップガン」は地上波で何度も放送していたので何となく観た程度の記憶しか無かったのですが。本作は前作をリスペクトしつつも越えたと思っています。過去作品があれほど有名でハードルが高かったはずなのに、これは偉大。

トム・クルーズは好きな俳優ですが、本作でもっと好きになりました。御年５９才にしてあの肉体づくり、あのアクション。本当に頑張っているし、何より歯が白い！何を言っているのかわからないかもしれないが、見て欲しい。歯が白いのだ。つまり、笑顔が素敵で、それは若い頃もそうだったけどさらにチャーミングになっていると感じました。

初代は調子に乗ったマーヴェリックが苦悩を味わってやっぱり成功する、という始終それなりにチートで苦労して成長する要素も無くあっさりしている印象がありました。今回は、そのチートぶりに磨きがかかっている！でも、そのチートさが人生の重みと相まって、すごくッ説得力があるんですね。これが良い。人生の苦さを経験した男、という重みがすごく良い形で現われていたのが良かった。

みんな最初はあんな奴、とかお前なんか、と思っていた若手パイロットや上司がマーヴェリックの真摯な態度やハイパーな技術にやっぱりこの男しかいない、という流れになるのは見ていて気持ちがいい。ご都合主義でも結構。気持ちの良いのだ。

ジェニファー・コネリー演じるシングルマザーのペニーも素敵でした。海をヨットで滑走する姿がすごくカッコ良くて、強い女性というのは時代だなあとしみじみ。初代でも美人で賢い教官が恋の相手だったけど、比べてみると彼女のキャラクターはどこかステレオタイプな都合の良い女性という感じを受けた。

アイスマンは当時すごくハンサムでしたね。本作では出世してマーヴェリックの後押しをしているという役柄が良かったです。しかも俳優さんご本人は咽頭癌を患っており、劇中の役と重なる部分があって時代の流れをリアルに感じる演出でした。

本作を初見で最高に興奮したのはやっぱりクライマックス。撃ち落とされて敵のヘリに狙われていたところ、折り合いが最悪だったルースターが助けにくる。さらに敵のF-14を奪って第五世代機を撃ち落として帰還、感動の抱擁と、もうメインディッシュを何皿も食べさせられるかのような演出に、素直にありがとう、ごちそうさまと言いたい。もう分かってたよ、そこで助かるんだろう、っていうことは。でも、手に汗握る演出が上手い。わかりきってるけど、上手くて大興奮だった。

困難に立ち向かうテーマでもありながら、ほとんど挫折のない、心地良いストーリーだ。それでいい。今はコロナ禍でみんな苦しい思いをしている。それを忘れさせてくれる気持ちの良い映画作品は必要だと思った。本作は時代に合った最高の作品であり、プレゼントなのだ。