プリズン・サバイブ

【作品情報】2008年 アメリカ 監督: リック・ローマン・ウォー


【あらすじ】

 ウェイド・ポーターは愛する妻と息子とともに平和な毎日を送っていた。融資を受けられることが決まり、結婚式の予定も迫っている、そんな幸せがある日突然崩壊する。

 深夜に家に入り財布を盗んだ強盗をウェイドは背後から撲殺してしまう。正当防衛は認められず、刑務所に収監されることが最善の方法だと弁護士に諭される。

 ウェイドは三年間の刑期を務めることに決まるが、ギャングに陥れられ重警備棟に入れられることになる。

 凶悪犯を集めた獄舎では、看守の横暴がまかり通っていた。


【見どころ】

 どこまでどん底に堕ちて行くのか、非情なまでのストーリー展開にハラハラさせられる。ウェイドは善良な市民で、過剰防衛のために刑務所に収監されることになるが、周りのワルのせいで障害事件の共犯者に仕立てられてしまう。


 そこから逃げ場の無い監獄内での危険な駆け引きや、愛する妻との別離と畳み掛けるように試練が訪れる。

 ついにはとんでもない殺人犯と同じ房になって、ウェイドの運命は一体どうなるのか最後まで目が離せない。


 俳優陣の鬼気迫る演技が素晴らしく、始終緊張感があった。それぞれのキャラクターも非常によく作り込まれており、特にキーとなる人物ヴァル・キルマー演じるジョン・スミスの存在感が偉大!


【感想】※ネタバレ含

 刑務所ものということで観始めた作品で、最初は刑務所バイオレンスアクションかと思っていた。しかし、アクション要素はさして重要ではなく、これはヒューマンドラマを描いた作品だ。


 苦悩するウェイドの迫真の演技に観る者は胸を痛める。暴漢を殺害してしまった後悔、家族と会えない苦痛、非情な看守によるいびりと畳み掛ける禍いは目を背けたくなるほどだ。

 ウェイドが人間性を失わずに済んだのは、愛する家族、そして同室になった凶悪殺人犯ジョン・スミスのおかげだった。彼との人間らしい対話で心を失わずに刑務所を出ることができた。


 副看守長のジャクソンは子煩悩で、かつて囚人に襲われかけた過去を持つ。囚人をけしかけて戦わせたり、横暴な命令を下す場面は憎たらしくもあるが、子供にかける愛に嘘はなく完全には憎みきれない絶妙なキャラクターになっている。


 見方になってくれる看守や、ジョンに恩義を感じている看守長はすさんだ世界でオアシスのような存在だった。彼らの果たした役割も大きい。


 ジョンの存在はある意味ヒーローだ。10人以上を殺害した凶悪犯だが、家族を殺害された復讐だという理由があった。悪人だが、憎めない。ジャクソンとはまた別のベクトルだが、彼も複雑で魅力的なキャラクターだった。ヴァル・キルマーのミステリアスで風格のある演技も素晴らしい。彼は死を望んでおり、それは遂げられた。


 この作品にはリアルな人間ドラマと大きなカタルシスがある。

 劇場上映が無かったというが、勿体ない作品だと思った。


 

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