ゲット・ア・ライフ
【作品情報】2004年 アメリカ 監督:プレストン・A・ホイットモア二世
【あらすじ】
麻薬の売買トラブルが原因で、市街地で行われた銃撃戦により最愛の息子を失ったマイケルは失意のどん底にいた。一方、二人の麻薬密売人は銃撃に使用した武器を捨て去り、殺人について無罪を主張。裁判でも証拠が無く、殺人罪に問われることなく密売人は刑務所へ送られることになった。
二人の密売人は互いを憎み合っており、それを面白がる刑務所内の囚人たちにより、賭けに利用される。刑務所内では刑務官の汚職もまかり通っており、絶望的な環境にあった。
一方、マイケルは犯人が罪を償うこと無く、軽い刑期で刑務所から出てくることに納得がいかない。犯人に復讐するため、警察官を暴行し刑務所に収監される。マイケルは息子を殺害した犯人に復讐することができるのか。
【見どころ】
刑務所バイオレンスアクション復讐劇かと思いきや、もっと深い人間の業を描いた作品。刑務所内のヒリヒリする人間ドラマにさらされるのは、意外にも主人公マイケルではなく、密売人の一人ダーティ。彼が刑務所で生き残れるのかのドラマがハラハラする展開に変化していく。
主人公の復讐の準備も着々と進むが、それと並行してダーティの立ち回りが気になり、途中から主人公が誰なのか、そしてこの作品は何を伝えたいのかというメッセージを読み解こうと引き込まれていく。
刑務所の危険な人間関係も見どころ。ラストシーンの意味をどう捉えるのか、観る人によって感想が違ってくるだろう。
【感想】※ネタバレ含
映画のあらすじで、「子供を殺された父親が刑務所に乗り込んで繰り広げる復讐劇」とされていたのでそのつもりで観たところ、驚くほど予想を裏切られた作品。
普通の善良な父親マイケルがどうやって悪党を倒すのかというバイオレンスアクションかと思いきや、犯人の一人はあっけなく殺害され、もう一人のある意味主人公ダーティは刑務所内での人間関係で苦しんでいる。そして善良かと思っていたマイケルは刑務所へ入るために警察官を暴行。警察官は一生身体に障害を負って生きることになった。これではマイケルに感情移入はしがたい。どんな展開になるのか最後まで目が離せなかった。
作中でのメッセージとして、復讐にかられた人間は身を滅ぼすということが強烈だった。マイケルは被害者であったが、復讐を思い立ったときに、怒りに身を任せた加害者になってしまった。息子を殺害した密売人の証拠を掴めなかったという恨みもあったかもしれないが、一人の人生を台無しにした罪は重い。
一方、犯人の一人ダーティは敵対した密売人を殺害し、身を守るために金が必要となり刑務所の中からも麻薬取引を続けようとする。どうしようもない悪なのに、最後はマイケルと殺し合い、マイケルの赦しを得た。
一見無茶苦茶なストーリーに思えるが、ダーティは娘を愛する気持ちを失わなかったことで救われ、マイケルは復讐にかられて身を滅ぼした。
通常は、ハンサムで誠実そうなマイケルに感情移入して本作を観るだろう。それが完全に裏切られる形になるのは面白いと思った。
復讐すること、人を憎むことは滅びにつながり、人を愛することは救いにつながるというメッセージが強烈に込められている作品。これは好き嫌いが分かれるかもしれないが、私は見事なシナリオだと感じた。
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