恋愛の章
初恋のきた道
【作品情報】1999年 中国 監督:チャン・イーモウ
【あらすじ】
都会暮らしのユーシェンのもとに父チャンユーの訃報が届く。父は華北の農村で長年、教師をしていた。父を深く愛する母は父の遺体を伝統に乗っ取り、葬列で連れて帰りたいという。
母チャオ・ディが若かりしとき、チャンユーは村に小学校の教師として派遣されてきた。教師を迎えるために学校が建てられ、授業が始まった。ディはチャンユーに恋をし、毎日昼食を届ける。しかし、文化大革命の混乱の中、町からの呼び出しでチャンユーは連れ戻されることになる。
【見どころ】
素朴な中国の農村風景が美しい。山を彩る木々や雪原、広大な大地の中にひっそりとある農村の暮らしもどこか懐かしい。少女の作る温かい食事も美味しそう。
自然光の使い方がとても秀逸で、野原や森の風景、人のいない教室など美しい映像も素晴らしい。
物語はいたってシンプルで、町からやってきた青年チャンユーに恋をする少女ディの姿を描く。それだけでなく、青年であった父チャンユーと添い遂げた母ディの思いが息子の目を通して描かれている。
チャンユーが連れ戻され、健気に待つディの姿がもどかしい。そして、交際に反対しながらもディの身を案じる母の心遣いも心に沁みる。ダイナミックな起伏はない、だがそれがいい。優しい気持ちになれる作品。
【感想】※ネタバレ含
原題は「我的父亲母亲」日本の映画界はいつも恋愛にうまく結びつけるタイトルをつけるものだと感心してしまう。村にやってきた青年と少女の恋愛がメインではあるが、一人息子が目の当たりにした知られざる父の姿と母の深い愛情が心を打つ。
ディのつくるきのこ餃子や揚げパンなど、湯気が匂い立つ美味しそうな料理も見どころ。中国の食に対する思いが伝わってきた。
ディの走る姿がおぼこくてとてもかわいい。彼女はすごい美人ですね。今では大物女優として活躍されています。一生懸命に走ってお皿を割ってしまったり、髪飾りを落としたり、ありがちな状況を自然に入れてくるところもニクイ。髪飾りが見つかったときは思わず喜んでしまった。
最後の父の人徳が伝わる葬列のエピソードもいいですね。都会で暮らす息子にも想いが伝わったようでじんときました。母の望んだユーシェンの最初で最後の授業、でも都会での生活は捨てられない、その現実味もリアルで良かったです。
物語はまるでおとぎ話のようにシンプルで美しい。前後の現代のエピソードにより、それが現実味を帯びる。無駄のない構成で心に残る素敵な映画でした。
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