プラットフォーム

【作品情報】2021年 スペイン 監督:ガルダー・ガステル=ウルティア


【あらすじ】

 ゴレンが目覚めると、48階層にいた。ベッドと水道、外が見えぬ明かり取りの窓だけの部屋だ。中央に四角い穴が開きそこから覗き込むと武骨なコンクリート製の建物が同じ構造で上下に果てしなく続いている。


 ゴレンは同室の老人トリマカシからここでのルールを聞かされる。

 中央の穴に降りてくるプラットフォームという台に食料が載っている。それは上の階層の人間が食べた残飯だ。生き残るにはそれを食べるしかない。取り置きすると部屋が異常な高温や低温になり、命の危険に晒される。


 一ヶ月単位で階層が変わり、下の階層ほど食事が食い散らかされ何も残らず、必然的に飢えるようになる。

 ゴレンは謎の建物から生きて脱出できるのか?


【見どころ】

 上質な密室心理系スリラー。

 謎の建物の目的は一切分からず、その中に入れられた人たちの人間模様を描く。ゴレンが出会う人間はくせ者だらけ。同室のトリマカシは上の方であれば協力してやっていけたが、階層が171階になるとゴレンを食料にするために縛り付ける。建物にはプラットフォームに乗って子供を探すイカれた殺人鬼の女もいる。


 食べ物を少しずつとりわけようという善良な女、上階を目指してロープを投げる男、彼らの行く末がどうなるか、ハラハラしながら見守ることになる。


 映像はコンクリートの無機質な建物が陰鬱で、無駄に豪華な食事も不気味に映る。暴力や残酷描写、排泄描写がリアルで、嫌悪感が半端ない。しかし、それでも結末を求めて観ることが止められないだろう。


【感想】※ネタバレ含

 ヨーロッパ作品だなあ、おい!というのが正直な感想。

 しかし、設定が面白いし人間の行動パターンがああ、追い詰められたらこうなるよ・・・というのを見せつけられ、ひたすらおぞましさを感じる。


 無害で良心ある一般人ゴレンに感情移入をして観てしまうので、彼がピンチに陥るとヒヤヒヤしてしまう。しかし、終盤に最下層を目指すときに食料を求めて襲いかかる人を鉄パイプでぶん殴るところはやはりここにいて狂ってしまったのだと痛々しい気持ちになった。


 同室のトリマカシ始め、身勝手な各階層の人たちを見ていると、人間が極限状態になったときどれほど他人に思いやりを持てるかと考えさせられる。他の階層に食べ物を残そうと呼びかけた女性はガンに侵されており、命への執着を無くしていた。そういう状況でなければこれほどの献身はできないのでは、と極論を突きつけられた気がした。


 終盤の相棒になった黒人男性が上の階層からやられたことには生理的な嫌悪感からくる恐ろしさを感じる。こういう場面を躊躇いなく描くのはヨーロッパならではとしみじみ。


 プラットフォームに乗って最後まで行き着く、というアイデアにはわくわくした。一体最後に何があるのか・・・予想外の結末にシュールさを感じた。


 闇の中を降りていくプラットフォームの映像が印象的。良心を持ちながらも結局罪を犯したゴレンは死んだ。少女を助けたことで人間は捨てたものではないというメッセージは管理者に届くのだろう。

 その後は一体!?なんとも忘れがたい、考えさせられる作品だった。



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