第4話 今日から 私がここの管理人です③
「と、管理人代打初日の幕が開けました。上手くやっていけるだろうか・・・と、思う暇もないくらい賑やかでした。おばあちゃん私、頑張るからね。
・・・それにしてもみんな私に色目を使ってきて困っちゃう。
あ~あ、私って罪な女」
『それは、ないから!』
心からの突っ込みだった。
「あら、そう?」
「そうだよ」
ん?俺、今母さんと話してる?
ここはどこだ?
うちっぽいけど、うちじゃない?
もしかして・・・
「どうしたの晴彦?」
母さんがいる・・・
しかも若い
もしかして俺、夢見てる?
そっかそっか夢か・・・
ここは下宿やってた頃のうちか。
うわぁなんか古臭くて新鮮。
「晴彦?」
にしても若い母さんか・・・自分の母親だけど、綺麗だな。
「大丈夫?」
あぁ、母さんの声。元気な元気な母さんの声。生きている母さん。ほとんどお見舞いにもいかなかったな・・・死に目にも会えなかったし。なんかお棺に納められている母さんの顔があまりにも強烈だったから、こうして今夢の中で会えてる母さんの・・・しかも若い母さんにどういう顔向けていいのかわからない。でもそんな心配そうな顔するなよ。俺元気なんだからさ。
「えっとね・・・母さん・・・若いね」
ようやく絞り出せた言葉がこれとは我ながら情けない
「ふふふっ、惚れるなよ」
なんなんだこの人は、俺の感慨を返せ。まぁちょっとは綺麗だなぁって思ったけどさ。
「ほ、惚れるわけないでしょ。何言ってるの?バッカじゃないの」
うわぁ、これじゃ動揺してますって言ってるようなもんじゃないか。しかもツンデレだし。俺の語彙力どこに行った?
するといきなり後ろから思いっきり蹴っ飛ばされてもんどりうった。
なんだ?だれだ?
「おい、晴彦。自分の母親に色目使うとは何事だ」
「百年早いわ。晴彦のくせに」
と、むさいロン毛とリーゼントちょび髭。シンガーさんとダンチョさんだ。
な、な、な、な、なんであんたら出てくるんだよ。これ俺の夢だろ。呼んでないんだよ。親子水入らずなのに邪魔すんなよ。消えろ。
めっちゃ強く念じても消えやしない。それよりも二人掛かりで俺を羽交い絞めにしてなんでかズボンを降ろしにかかる。
ふざけんな。ばかやめろ。ガキか!小学生か!母さん笑ってないで助けてよ。
いよいよシンガーさんの手が俺のトランクスに手がかかり二十台半ばにして母親に股間をお披露目しなくちゃならなくなる寸前に、シンガーさんとダンチョさんがフッ飛ばされた・・・ナイチさんに。
おぉぉぉ、正直超好み。
スッとしたスレンダーな体形に、ベリーショートの髪の毛、ちょっと癖っ毛なのかな前髪の毛先が遊んでる。切れ長の目元にすっと通った鼻筋、きつく結んだ口元は濃い目の赤いルージュが似合いそうだ。
見とれてる場合じゃない。とにかく、股間のお披露目をせずに済んだことのお礼を言わなきゃ・・・
と、いきなりナイチさんに小突かれた。
なぜ?
「ごちゃごちゃ遊んでないで先を読めよ、クソガキ」
カッチーン!
傍若無人じゃないですか?そもそもこれは俺の夢だ。好き勝手してて何が悪い。誰にも迷惑かけてないだろうが。
「わかった。漢字が読めないから続き読めないんだ」
はぁ?なに言ってるんだこの人?少しぐらい綺麗だからってバカにするなよ。
「ごめんね、晴彦。あなたにも読めるように読み仮名ふっておくべきだったね」
おほほいおほほい。母さん、あんたの息子そんな馬鹿じゃないよ。
「俺、大学だって出てるんだからね、母さんがかける漢字くらい読めます」
自慢じゃないがそこそこ優秀だったのですよ、俺は。
「おぉぉぉぉ!」
と、驚くほどの歓声があがった。
シンガーさん、ダンチョさん、ムンクさん、カッペさん、コボンさん、ナイチさんが万雷の拍手を送ってくれている。あんたらいつの間に揃ったんだよ。めっちゃ恥ずかしい
「驚くことの程でもないよ。・・・まったく、読むよ。読めばいいんだろ」
母さんが「頑張って晴ちゃん」って応援してくれたけど、別に頑張るほどの事でもない。・・・けど母さんの『頑張って』はやっぱりいいなぁ。出来る範囲の事を精一杯やればいい。無理はしちゃ駄目よ。・・・よく言ってたっけ。しかも晴ちゃんって・・・そんな呼ばれ方、いつ以来されてなかったか・・・小学校に上がるころには呼ばれてなかったな。保育園にいたころか・・・あの頃は・・・確かまだ下宿やってたっけ・・・
「頑張って晴ちゃん」と、男どもがからかい半分で言いやがる。
うるさい、男どもの声援なんて嬉しくないんだよ。せめてナイチさんに優しく耳元で「頑張って晴ちゃん」って言われたいわ。デヘヘッ。と、期待と下心でナイチさんを見てみると、明後日の方を見てやがるの。残念
さて続きを読むか・・・俺は日記帳のページを捲った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます