第3話 今日から私がここの管理人です②
『と、着いた早々気絶してしまいました』
俺は母さんの日記をまるで小説でも読むかのように楽しんでいた。日記帳はもう十ページ近く進んでいるのに、まだ母さんがうち・・・当時は下宿か・・・に着いてから一日もたってない。
日記の中で、母さんを無視して暴れまくっていたのがおそらく下宿の住人達なんだろうけど・・・まるで漫画のようなキャラの濃さ。
話もってる?
・・・自分の発想にあきれ果てる。日記だぞ、これは。
もってどうする?
誰に読ませるって言うんだよ。
まぁそんな発想はあの人からは出てこないだろう。
嘘が嫌いな人だったから。
さてさてどうやって代打で始めた管理人が、レギュラー(?)になったんだろ
・・・本格的に読んでみるか
・・・ヤバイ、お茶とお茶うけ欲しいなぁ。
冷蔵庫に何かしらあるだろう。
何せ今日はお通夜で色んな人が来たんだから
・・・っと、キッチンに目を向けると・・・
おばさんが仁王立ちしていた。
「まだ読んでる」
と、怒り半分呆れ半分の声で、俺の状況説明してくれた。その両手にはお盆を持ち、湯飲みが三つ。暖かそうな湯気がたっている。
さすがはおばさん、俺の欲しているものをちゃんと理解してくれてる。
「ありがとう」と湯飲みを奪い取り喉を潤す。
あぁやっぱりおばさんが淹れてくれたお茶が一番おいしいよ。なんて軽口叩いてみるも、おばさんの眉間のしわは一向に元に戻ろうとはしていない。
「普通はあんたが私たちにだすんだよ」
「次から頑張る」
「今頑張んなさい。まったくもぅ、どこで間違ってこんなに可愛くない子に育っちまったのかね」
「遺伝だよ」
と、いつものようなやり取りをしてたんだけど、急におばさんの顔に影が差した。
あれっ、なんか地雷踏んだかな?
おばさんの顔色を注意深く窺うと、いつものように眉間に深いしわが刻まれていた・・・
いや、いつもより一本多いかも・・・
「うちの人に叱ってもらわなきゃダメね。おいで」
と、湯飲みのお茶がこぼれてしまいそうになるくらい強く俺の二の腕を引っ張って母さんが眠っている部屋に引っ張っていかれた。
――――――――――――――――――――――
「どうぞ」
と、シンガーさんが、お茶を出してくれたものの、まだ夢見心地で地に足がついてない感じで飲むに飲めないでいた私に
「どう?」って味を聴かれて慌ててお茶に口をつけた。
むせかえるほど濃い。
いったいどんなお茶の淹れかたをしたらこんなになるんだろうか?
・・・なんてゆっくり考える間もなく、皆さんがジッと私の返答を待っている。
「こ、濃いです。」
なんとか答えると、「よかった」と、本気なのか冗談なのかわからない返しをして満足そうにしている。
でもちょっと落ち着いたかな。
今は共用スペース件食堂のテーブルに私を囲むように皆さんがいる。
私の左隣にナイチさん。右隣にシンガーさん。正面にダンチョさん。
床に座ってるのがいつのまにやら服を着たコボンさんとその後ろにカッペさん。
少し離れた部屋の隅のところで、これまたいつのまにやら持ってきたイーゼルとカンバスに向かって絵を描いているのがムンクさん。
さっき駆け足で自己紹介してくれたんだけど、みんなあだ名なの。本名は覚える価値がないってナイチさんが一刀両断しちゃって、私も準備してた自己紹介がほとんど出来なかった。
整理しよう・・・
私がここに来て一番始めに会った?というか喧嘩してたヒッピーとチョビ髭がシンガーさんとダンチョさん。
シンガーさんはれっきとしたフォークシンガーなんですって ・・・まぁ売れてる訳じゃないらしんだけど。今は自分の夢に向かって頑張ってる途中なのかな?
ダンチョさんは大学生で、なんと応援団の団長なんだって。・・・でも大学6年生・・・留年してるんだよね。「後輩の育成のために残ってやってる」なんて強がっていたけど、周りの方々が口々に冷やかしていたのできっと何かしら別の理由があるんだろう。
そして裸で私に飛びかかってきた七三分けの浅黒の肌の持ち主がカッペさん・・・生まれが福島らしくってお国訛りが新鮮でした。
同じく裸で飛びかかってきた、たゆたゆお腹の持ち主がコボンさん。落語家さんなんですって。
そして二人を追いかけてきた河童鬼がムンクさん。絵描きさんなんですって。さっきはカッペさんとコボンさんをモデルに絵を描こうとしてたらしいんだけど、なにやらモデルとして爆発力にかけるとかで、一枚また一枚と服を脱がしていくうちに、コボンさんとカッペさんが逃げ出したらしいの。なにも全裸になるまで脱がなくてもいいのに・・・そもそも脱いでる途中でおかしいとは思わなかったんだろうか?・・・思わなかったから私が追いかけ回されるはめになったんだろうけども・・・はた迷惑な話だ。
そしてこの下宿の紅一点ナイチさん。まさか女性がいるなんて思ってもみなかった。おばあちゃん何も言ってなかったし。寝ぐせだらけのベリーショートの髪の毛で寝間着姿。夜勤明けで寝ようとしてたところを男性陣の大騒ぎで寝るに寝られず頭に来て包丁を持ち出したんだとか・・・いくらなんでもやり過ぎな気もするけど・・・
そしてなんとナイチさんは看護婦さん。驚きです。気絶した私を解放してくれたのもナイチさんだったの。男性だらけのこの下宿でやっていけているのは、持って生まれた気性なのか、看護婦という仕事がらなのかわからないけど、ここでは皆さん一目置いてる感んじ。皆さんにとっての姉御なのかな。・・・どちらかというと親分みたいな感じしちゃうけど・・・
「悪かったね、まさかあんたが今日からここの管理人だなんて思ってもみなかったからさ」と、シンガーさん。
この人は悪気なく人を傷つける天才なのだろうか?悪意がないのはわかるんだけどいちいち癇に障る。
腐っても仕方ないのでおばあちゃんが旅行にいってる間だけの代打であることを伝えるも
「あのババアの言ってることあんまりよくきいてなかったんだよね」と、またも人の神経を逆撫でするシンガーさん。
ババア?私のおばあちゃんを捕まえてババアですって。
たしかにおばあちゃんは口が悪い。何かにつけ口うるさいし、ちょっとでも口答えしようもんなら十倍・・・いや百倍の小言が飛んでくる。
でも・・・でもそれは相手のためを思ってだし、決して嫌ってのことではない・・・はず。おばあちゃんのことを知らない人からみたらそりゃめんどくさくて関わりたくないかもしれないけど、だからってだからって、シンガーさん、あなたはこの下宿でおばあちゃんにお世話になってるんでしょ?朝晩のご飯をいただいてるわけでしょ。決して知らない仲じゃないのに「ババア」呼ばわりってどう言うことなの。私が怒りで顔を赤らめていると
ダンチョさんが「バカそれじゃわかんねーだろ」とシンガーさんを押し退け
私の手をとり・・・いや握り締め
「ですからあのクソババアは呆けちゃってたから、俺たち奴の話なんて聞いてなかったんですよぉ」
と顔を間近に寄せてきた。それをナイチさんが包丁で威嚇してくれてダンチョさんの接近はやんだのだけれど・・・私の顔の赤らみはきっと凄いことになってただろう。ダンチョさんは私が照れて顔を赤く染めてるのと勘違いしたのか意気揚々と捲し立て始めた。
「いやね、あのクソババアは何かにつけて文句言ってくるんですよ。やれ飯は決まった時間に食べろとか好き嫌いするなとか、本当、人の顔見りゃ文句ばっかりうんざりですわ。」なんていって誇らしげに笑っている。
我慢の限界でした。
私は熱くなった顔を赤らめたまま、ワナワナと震えながら
「クソババアとはどういうことですか?」
ダンチョさんはちょっと気をもんだのか
「ごめん、ちょっと言い方がきつかったよね、ウンコババアだね」
・・・
・・・
私はまた思考が停止しかけた。
・・・私、何かおかしなこと言った?
なんでそう解釈できるの?
「クソ」の丁寧語が「ウンコ」ってどういう変換したらそうなっちゃうの?
私は何をどう伝えれば私の怒りが伝わるのか考えあぐねていたら、少し離れたところから
「あんなクソババアいなくてすっきりだよ、これから飯よろしく」
と、カンバスに向かったまま、こちらを見もしないでムンクさんが言い放った。
さすがに私も堪忍袋の緒が切れた
「クソババアってなんですか!」
私としては鬼の形相で言い放った・・・つもりだった。それこそ血液が沸騰していて背後に不動明王が睨みを効かせててもおかしくない様相・・・
なのにムンクさんは何事もなかったかのように
「吾輩たちの間ではそう呼んでたんだよ」と、またもカンバスと睨めっこしたまま言い、みなさんはさも当たり前のように首を縦に振っている。
私は赤を通り越してどす黒くなってるであろう顔をして
「あなたたちは鬼畜ですか!」
・・・言ってやった。・・・初対面の人たちに対して言うはずもない言葉、言っちゃいけない言葉だってのはわかってるけど、この人たちに私のちっぽけな常識が通用しないんだもの。これくらいきっとへでもないはず。どーだまいったかと私は皆さんの顔を見渡してみた。すると今までずっと黙っていたカッペさんが、頭の七三をきっちりと手でなでつけ
「おらはそんなこと一遍も言ったことないです。ちゃんと管理人さんと呼んでましたから」と、はにかんだ笑顔をのぞかせた。
よかった。ちゃんと私の言ったことが理解できる人がいたんだ。おかしいのは私じゃない。ここの人たちよね。
と、思ったのもつかの間、カンパスにむかっていたムンクさんが、筆とパレットを置き、カッペさんにつっかかった。
「貴様、何一人でいい子ぶってるんだよ」
「いい子ぶってなんかいません。人間として常識のある行動をしただけです」
「常識ある人間が、裸で初対面の人間を出迎えるのか?」
「そ、それはムンクさんがヌードモデルをさせようと・・・」
「うるさい!」
と、ムンクさんがカッペさんの胸ぐらをつかみ突き飛ばした。カッペさんは勢いよく吹っ飛んだけど、その先にちょうどコボンさんがいたので受け止めてあげて転ばずにすんだ
・・・受け止めた、というよりぶつかったっていうのが正直なところなんだけど。
急の人間爆弾を食らい怒ったのはコボンさん、もらい事故もいいところ。
「なにするでやんすか」とカッペさんをそのままムンクさんに突き飛ばし返す。
こともなげに飛ばされるカッペさん。
受け止め突き飛ばし返すムンクさん。
カッペさんはピンポン玉のようにムンクさんとコボンさんに突き飛ばされ合っている。「うおっ」「うわっ」と悲鳴?をあげるしかできないカッペさん。
さすがに人道的にあまりにも惨いので止めにはいったけど、聞く耳を持ってもらえない。
女の非力さが疎まれる。やはりこういうときにたよりになるのは男性。シンガーさんダンチョさんに助けを求めようと視線を向けると、ムンクさんとカッペさんとコボンさんのやり取りを微笑ましそうにみている。しかもシンガーさんは「どっちも負けるな」なんて応援までしてる。私が涙目でおろおろしてるのに気が付いたダンチョさんが「煽ってないでとめろよ」とシンガーさんを促してくれたけど「お前こそとめろよ」と言い合いになりそうな雰囲気・・・もしやと思う間もなく二人はとめるとめないで喧嘩を始めてしまった。
なぜ?
どうして?
あっちでもこっちでも喧嘩喧嘩・・・どうしたらいいのかわからない。
すると台所に包丁を返し終えたナイチさんが
「また始まったよ、バカ野郎どもが」とウンザリしながら暖簾をくぐって出てきた。
もう頼れるのはナイチさんしかいない。
「どうすればいいんでしょうか?」と地主様に年貢の減税を懇願する農夫のように聞いてみたら
「勝手にやらせておけばいいよ。私は耳栓でもして寝るわ。おやすみ」
と、二階に向かっていってしまった。
あぁ懇願むなしく地主様が行ってしまわれた・・・
「うぉぉぉぉ!」
男性陣は私の悲嘆をよそに白熱した喧嘩をしている
・・・そうだ私は管理人なんだ・・・代打だけど・・・私が頑張るしかない。
私は着替えのつまったカバンをしっかりと持ち「きえぇぇ!」と気合一閃、カッペさんめがけて振り下ろした。カバンはカッペさんの横っ面を見事に捉え「ぶへぇ」という奇妙な奇声を上げてカッペさんをふっ飛ばした。
・・・!
皆さんが止まった。
今だ、今しかない!
「ぼ、暴力はよくありません!」
・・・決まった。ポーズもばっちり威厳もたっぷり。自分で自分を誉めてあげたくなる。
「いや、自分でやっておいて」
と、皆さんから総ツッコミされてしまった。
そりゃそうか私は凶器(カバンだけど)で罪もない(たまたまカッペさんが叩きやすかった)人に暴力を振るってしまったんだもの・・・でもここで怯んではダメ。勝負どころなのよ。
「私はいいんです。こ、こ、これは愛の鞭です」
皆さんこれにはキョトンとしている。
畳み掛けるチャンス
「みなさん、おばあちゃんに謝ってください」
「なんで?」と、シンガーさん
「おばあちゃんのことクソババアって言ったからです」
「クソババアはクソババアなんだからしょうがないじゃん」とダンチョさん
「ダンチョさんお家賃十倍です」
すると今まで何をやっても平然としていた顔がみるみる青ざめていく・・・これは素敵な切り札を手に入れたかもしれないぞ。
「ななな、なんでさ」
狼狽えておる狼狽えておる
「管理人権限です」
決まった。我ながらばっちり決まった。これ後光が指しててもおかしくないんじゃないかしら。ほっほっほ、皆の衆、今度こそぐうの音も出まい。
「でも代打なんでやんしょ」とコボンさん
私がぐうの音も出ない・・・負けるな私。
「代打ですけど・・・おばあちゃんが戻ってくるまで私が管理人です。私はここで皆さんと仲良く楽しく生活していきたいんです。だから喧嘩したり悪口言ったりする人はお家賃十倍です」
皆さん、顔面蒼白。
これはいい。
カッペさんだけは「おらは悪口も言ってないし喧嘩も巻き込まれただけで自分からはなにもやってない。むしろ被害者なんですけど」って言いたげだったけど、そこは連帯責任。死なばもろともって言うじゃない。さぁ、みんなで仲良く謝りもしょう。
みなさん、まだまだ不満一杯みたいなのでとどめの一発。
「お家賃二十倍にしますよ」
一斉に「ごめんなさい」綺麗に揃ったの。私は感動で胸がいっぱいになってみなさんに拍手を送りました。ほらみなさんもみなさんに拍手。拍手。促して回ったけど、あまり乗り気じゃないみたいでまばらな拍手。・・・まぁしょうがないか。
いつのまにかナイチさんが共有スペース兼食堂に降りてきてて、入り口付近の壁に背を預け優しく見守っててくれたの。ナイチさん、拍手ですよ拍手。
・・・ナイチさん?
ナ~イ~チ~さん?
目は空いてるけど・・・
いやだ白目向いてる。
なにこれどういうこと?
パニックになる私をよそにみなさんは平然としてる。
「気にするな、寝てるだけだから」と、ムンクさん
寝てるだけ?
立ったまま?
白目向いてるんですけど?
え?
え?
え?
「寝付きは悪いけど、一度寝たら起きないんだよ。そのうち慣れるから」とダンチョさん。
慣れる?
これに?
唯一まともな方だと思ってたナイチさんも、やはりここに住まうだけの異常を抱えていたのか・・・私はもう孤独感でいっぱいだった。
そんな狼狽える私を余所に、シンガーさんが「そういやこの前、ナイチのやつ玄関で寝てたじゃん」
男性陣はあったあったなんて微笑ましく懐古している。
シンガーさんは椅子の上に片足をのせ
「俺、ためしにおっぱいつっついてみたんだよ」とハードロッカーよろしくポーズを決めた。
言葉とポーズのギャップ・・・そして何をほざいているのだこの人は。
男性陣はシンガーさんの勇気に勝算の眼差しで、続きを促している
シンガーさんは天に向かって突き上げた拳を開き
「起きないのよ」
男性陣は「おぉぉぉぉ!」とまるで大きな獲物を捕らえた狩猟民族のような歓声の声を上げた
いよいよシンガーさんの調子が上がっていく。今度は両手を左右いっぱいに開き、椅子を踏み台にテーブルに片足を乗せ、
「それで俺は勇気をもって、おっぱい鷲掴みにしたのね」
男性陣のごくりと固唾をのむ音が私にまで聞こえてくる。
「起きないのよぉ!」
「いやっほうぉぉ!」と、天変地異を起こしたかのような嬌声が響き渡る。
シンガーさんはまるで神にでもなったかのようにテーブルから飛び降りて
「そして!そしてそしてそして更に俺は調子にのって・・・」
と、ここで私の平手打ちが見事にシンガーさんの左頬を捕らえた。
「スケベ!」
予期せぬ平手に驚いてるシンガーさん「なにするんだよ」
「なにしてるんですか。婦女暴行でおまわりさんに言いつけますよ。」
「いやいやいや、俺暴行されたっておまわりさんに言いつけるよ」
「おまわりさんは正義の味方です。」
「会話になってないよね」
そこでダンチョさんが割って入り「喧嘩はそれまで。シンガー謝れ」
「なんでだよ」と、シンガーさんに言い返す間を与えず
「謝ったほうがいいぞシンガー」とムンクさん
「どうせ謝るなら土下座が見たいでやんすね」とコボンさん
「あっそれ土下座土下座」とカッペさんの呼びかけで、いつもまにやら土下座コール。
なにも土下座までしてもらわなくてもいいんだけれど引くに引けなくなってしまった私は不動明王の姿勢のまま、シンガーさんに冷たい視線を送っていた。
逃げ場がなくなったシンガーさんは、苦虫を噛み潰したような顔をしながら、「すいませんでした」と私とナイチさんに土下座してくれました。
・・・生まれて初めて土下座を見ました。なんとも言えない気分。決していい気分ではないのだけれど・・・なんというか背徳感?がある感じ。
土下座をしているシンガーさんを他の方々は狂喜乱舞しながらからかうの。
仲がいいのか悪いのか・・・
ムンクさんが「やることがセコイな貴様は、こっそりおっぱいを揉むから土下座などしなければならなくなるのだよ」と、とどめの一言を突き刺しました。
堂々と揉んでも駄目だろうけど・・・
恨めしい視線をムンクさんに向けるシンガーさんを尻目に悦に入ったかのようにムンクさんが語ります。
「吾輩など、この間、ナイチが階段で寝ている隙に服を脱がせてヌードを描いたぞ!」
すると皆さん、今までで一番大きな歓声を上げてムンクさんの偉業?を褒めたたえます。
「題して、『階段で寝る裸のナイチ』、吾輩の最高傑作だ!」
男性陣は、歓声とともに足を踏み鳴らしムンクさんが歴史を画す事績をしたことを称賛し祝福し羨望したのでした。
・・・が 、やってることはただのスケベ行為。許せるわけがありません。私は渾身の力を込めて「スケベ!」っとムンクさんに平手を繰り出しましたが・・・スルッとよけられ、私はもんどりうって尻もちをついてしまい、
それをムンクさんはあざ笑いながら
「スケベではない芸術なのだ」と言い放ったの。
そしたら他の男性陣は「おぉ~芸術なのだ」と続きます。
ムンクさんが「おっぱいは芸術だぁ」と宣言すると
「おっぱいは芸術だぁ」と男性陣が追従し
ムンクさんが「芸術はおっぱいだぁ」と断言すると
「芸術はおっぱいだぁ」と続き
ムンクさんが「おっぱいがいっぱいだぁ」と布告すると
「おっぱいがいっぱいだぁ」と倣うのでした。
ムンクさんはソファーの上に立ち、まるで現人神が降臨したかのようなたたずまいで「おっぱい」を連呼し、ほかの皆さんも「おっぱいおっぱいおっぱいおっぱい」と狂喜乱舞するのでした。
なんだこれ地獄絵図か・・・?
っと、放心してる場合じゃない私がしっかりしなくちゃ!
私はテーブルをバンッっと大きく打ってバカ騒ぎするのをやめさせ、皆さんが私に注目するのを待ってから
「スケベは駄目です。お家賃百倍にしますよ」
男性陣は綺麗にそろって
「ごめんなさい」
見事なハーモニーを奏でたのでした。
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