第29話、センニンダケを見つけた
午前中、チビ達ではセンニンダケを見つけられなかった。
午後は俺も加わる。南の方角から微かに匂う。
チビ達をその方角に向かわせると、崖の下でミーミー鳴き出した。
「少し離れていてくれ」
「どうするんですか?」
「オオカミになって、爪で削り落とす」
「無茶しなくていいですよ」
「いや、問題ない」
俺は変身して、助走をつけて壁にジャンプして、センニンダケの生えている場所を爪でえぐる。
「どうだ」
「先にパンツ履いてください!」
無事にセンニンダケを採取できた。
もう一度オオカミの姿になって周辺のにおいを確認するが、センニンダケの匂いはしない。
「他にはなさそうだ、今日はこの一本だけだな」
「だから、パンツ!」
帰りも、適度にキノコを狩りながら店に帰った。
「ほう、本当にセンニンダケを見つけてきおったか」
「さすがに、一本しかなかったけどな」
「センニンダケが二本も三本も見つかってたまるかよ」
「はははっ。
どうじゃカエデ、自分で見つけられそうか?」
「とても無理だと理解しました。
どうしてあんなに高い報酬を提示するのか。
場所さえ分かれば自分で採取できるんじゃないかなんて、浅はかもいいところです。
自分では、食用のキノコすら探せませんでした」
「ああ、キノコが大漁だったぜ。
爺さんにも少し分けてやるよ」
俺はリュックを下して中を披露する。
「ほう、シメジにシイタケ、マイタケにヒラタケかよ。
どうじゃ、カエデに調理させるからうちで鍋にせんか」
「ああ、それでもいいぜ。
あっ、爺さんは酒精の強い酒は好きか?」
「ほう、そんな酒があるのか?」
「ああ、ついでに傷の消毒に使う酒も持ってこよう。
一度帰ってまた来る」
「ああ、まっちょるぞ」
三人で食いきれる程度のキノコを分けて、俺はいったん家に帰る。
「俺は薬屋の爺さんと飲むことになったから、これはお前らで食ってくれ」
「すごい量のキノコね」
「ああ、大漁だったぜ」
俺は消毒用のアルコールとブランデーを抱えて薬屋に戻る。
「これが消毒用に作ったアルコールだ。
傷口にかければ、雑菌を除去できる。
そうすれば傷口が化膿しないはずだ」
「ほう、そんなものを作っておったか」
「ああ、俺の嫁が兵士たちのケガを治すのに、舐めなきゃならんので作った」
「その話は聞いとるよ。そうか噂の聖女がお前の嫁か」
「もう一人、料理王も嫁だぞ」
「ほう、その若さで二人の嫁かよ」
「まあ、二人とも別世界の人間だからな。
どちらか一人だけでこの世界の男と暮らすのも寂しいだろう」
「そうか、お前たちは召喚によって連れてこられたんだったな」
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