第28話、キノコ狩り
俺は薬師の爺さんを訪ねた。
「すみません、ギルドからいわれて来たんですが」
「あっ、仁さんですね。お爺ちゃんを呼びますのでお待ちください」
薬屋のお姉さんはそういって奥に引っ込んだ。
俺のイメージに反して、店にはそれほど薬が並んでいるわけではない。
おいてあるのは、回復薬と傷薬程度だ。
やがて、仙人みたいな小柄な爺さんが現れた。
「お前さんかい、専属契約を断ってくれたのは」
「悪いな、こう見えて結構忙しいんだよ」
「ああ、承知しておるよ。
竹ペンやリバーシを作っとるんじゃろ」
「まあ、作るのは職人に任せているんだが、何か思いついたらかかりきりになるからな」
「じゃがな、急な病人なんかで特殊な薬が必要になる時があるのじゃよ」
「ああ、空いてる時ならやってやるよ」
「特に、鮮度の必要なものは、使う直前にとらざるをえんのじゃよ」
「わかったよ」
「それとな、別の話になるのじゃが、採取の時にこのカエデを連れて行って欲しいんじゃが」
「俺は構わんが、男の裸に免疫はあるのか」
「なんじゃ、お前は裸で採取するのか」
「裸といえば裸だな……」
「まあ、病人を見るときには裸にすることもあるからのう」
「はい、大丈夫ですよ」
「俺はオオカミに変身できるんだ」
「ほう、では匂いで薬草を探しておるのじゃな」
「そういうことだ。
だから、変身する時は素っ裸だ」
「あ、あの、変身する時は後ろを向いてますから」
「それでいいなら構わないぜ」
そんなやり取りがあって、翌日採取に同行することになった。
翌日、俺はイチロとジロを連れて薬屋へ出向いた。
三匹だと、手が回らない可能性があるからだ。
「これって、シャドウパンサー……」
「ああ、俺よりも劣るが、こいつらも匂いを追うのは得意だからな。
で、今日は何が目的なんだ」
「全般でいいんですけど」
「それじゃあダメだ。
匂いを追うんだから、対象を特定して、サンプルを用意してくれよ」
「じゃあ、センニンダケでいいですか。
それなら、いくらあっても売れますから」
「いきなりハードルをあげるじゃねえか。
一個見つければひと月分の生活費だぜ」
「無理でしょうか……」
「いや、構わねえぜ。
サンプルはあるんだよな」
「はい、大丈夫です」
俺たちは山の麓まで、馬車で移動してキノコ採取を始めるのだった。
最初はイチロとジロだけで探させる。
俺は後ろからついていくだけだ。
その間にも、サルノコシカケやマイタケなどを見つけて採取していく。
シメジ・シイタケなども快調に採取できた。
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