第14話、サトウダイコンを探せ
「なあ智代梨」
「なあに?」
「治ったあとも、俺のそばにいてくれないか」
「……でも、私……男の人が怖いの」
「俺も怖いのか?」
「仁は……怖かったら、こんなことできない……」
「急がなくていい、ゆっくりと二人の関係を作っていこうぜ」
「……うん……」
ミツバチの巣は簡単に作れる。
必要なのは木板と釘だけだ。
重要なのは、スズメバチ(この世界にいるか知らないが)に侵入されないよう、巣の入り口を高さ7mmにすること。
重箱式二段の巣箱を5つ作り、あとはハチの集まりそうなところに置いて分蜂を待つだけである。
すると、萌が何が面白いのか巣箱のところでじっと様子を伺うようになった。
ハチさんハチさん♪ブンブンブン♪
まるで幼稚園児のようだ。
元からそのイメージではあったが……
ある日のこと
「ハチさんくるって~!」
「なにが?」
「ハチさん」
「なんて?」
「巣箱……あれっ?」
「昼間っから夢見てんのか?」
「……あれっ?」
「仁、ハチが入ってるよ」
「ホントか!」
「……あれっ?」
「どうした」
「うーんとね、ハチさんと話した……」
「……?」
「女王と王様連れてくるって……」
「まさか、それが萌の能力なのか?」
「うーん、よくわかんない」
ともあれ、ミツバチの誘因に成功したようだ。
俺たちは温室を作り、そこを花で満たした。
分蜂用に次の巣箱も作り、なんとか軌道に乗せられたようだ。
2か月後、俺は何とか自力で歩けるようになった。
動けるようになれば、やることはいくらでもある。
色々な木の実と樹液を採取し、ソースを試作するのだ。
それから、食べられそうな野草を探す。
特に、根菜を探して、サトウダイコンみたいなのが見つかるといい。
これには、俺の鼻が役立った。
とにかく、甘いにおいの植物を片っ端から採取した。
「仁、この根菜なら、サトウにできそうよ」
「そうか、わかった。
採れるだけ取って栽培しよう」
砂糖が安定供給できれば、菓子だけでなく料理にも気軽に使うことができる。
樹液採取の副産物で、俺はゴムの木を見つけた。
確か、硫黄と混ぜればゴムになる、
硫黄は魔王宮のあった火山で、簡単に手に入る。
ゴムは目玉商品になるかもしれない。
その間も、恭介はヒット商品を生み出している。
洋バサミは、服飾組合を通じてすごい勢いで広まっている。
製造が追いつかず、職人に発注したほどだ。
こうして、俺たちの雑貨屋は繁盛していった。
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