第13話、雑貨屋開店

「私たちで考案いたしましたプリンという水菓子です」


「まあ、甘い香りが……」


「冷たいほうが美味しいので、どうぞお召し上がりください」


「あら、では……

まあ、……口の中で溶けてしまいます。

ああ、幸せの瞬間……」


「なに?それほどのものなのか」


「陛下もどうぞ」


「おお、…………

これは!」


「こ、このようなものを、市中に出すというのですか」


「どれほどの価格で売るというんだ」


「プリンは一つ銅貨2枚です」


「金貨とか銀貨の間違いであろう」


「いえ、銅貨2枚ですよ」


「うーむ、安過ぎると思うのだが……」


「平民でも、ちょっと手を伸ばせば食べられるくらいの価格だと思います」


「毎日、城で買い占めてはいかんか」


「陛下、そのようなお戯れを……」


「では、月に一度くらいはいいだろう」


「はい。仰せのままに」


「で、こちらのものは……金の羽ペンだと!」


「金を使ってペンを作りました。

インクと共にお試しください」


「うむ、紙をもて」


「陛下、ちょうどこの者たちの営業許可申請が来ておりますのでご署名をお願いします」


「おお、では…………

極上の書き味、しかも細い線で滲まず、くっきりと書けておるではないか」


「平民には、竹で作ったペンを販売いたします」


「いくらだ」


「インクが銅貨5枚で、竹のペンは銅貨1枚でございます」


「これもかよ」


「こうしたものが出回れば、平民の識字率も上がりましょう。

それと、王妃様には羽ペンをあしらった髪飾りをお持ちいたしました」


「まあ、うれしいわ」


「すまんのう。

勝手に呼びつけたわしらを恨んでも仕方ないと思っておったのだが」


「呼ばれていなければ、間違いなく死んでおりました。

ならば、この世界で楽しみながら生きてみようと考えております」




翌日、メイドたちに試食させ、店の概要を説明する。


「店番は、私たちにお任せください」


「菓子作りも俺たちでやりますから」


「それだと、俺たちの仕事が……」


「新しい商品開発をお願いします」


「貴族街ですから、金の羽ペンも売り出しましょう。

一本、金貨5枚ですね」


メイドたちのほうがノリノリだった。

こうして、俺たちの雑貨屋は開店した。




「恭介、無理するなよ」


「ああ。

だが、こうして皆で働くことが楽しくて仕方ないんだ。

ピーラーなんて、料理人が驚くんだぞ」


「よかったな」


「足のほうはどうなんだ」


「智代梨のおかげで、膝と足首は固まったから、これからリハビリだよ」


「がんばれよ」

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