第10話、オオカミのイメージに騙されるな

「でもさ、オオカミって悪いイメージしかないじゃん。

ほら、送りオオカミとかさ」


「あれも、間違った解釈だよ。

オオカミは縄張りをもっていて、縄張りに入ると好奇心もあって監視にくるんだ。

それで、縄張りから出るまでついてくるんだよ。

だから、オオカミがいなくなったら縄張りから出たってことなんだけど、昔の人は縄張りから出るまで案内してくれてありがとうって、感謝したらしいんだ。

だから、送りオオカミは悪いことをする例えじゃないんだぞ」


「えー、でもやっぱ赤ずきんのイメージが強いな」


「じゃあ、聞くけど。日本の童話で、オオカミが悪いのってあるのか」


「あれっ?

ホントだ。日本で悪さするのって、キツネやタヌキ……」


「あったとしても、最近になって作られた、オオカミを理解していない人の作品だろ。

オオカミは大神であって神の使いとも考えられていたんだ。

神の使いを悪者にするはずがないだろ」


「悪いのは、グリムとか、そういう童話を作った人?」


「どうなんだろうな。

世界的に広く生息してる肉食獣で、生活圏が重なって家畜が襲われることはよくあったみたいだけど、人の被害ってそんな状況でもごくわずかだよ。

結局、作者が怖がりだったんじゃないのかな。

だって、オオカミは犬の起源だろうよ」


「そっか……

でも、仁君はなんでそんなにオオカミを庇うのかな?」


「俺も、最初はオオカミって悪いイメージだったんだけど、調べてたらあれ、実際は違うじゃんって思ってさ」


「じゃあ、オオカミちゃんには……って」


「日本で人を騙すのって、タヌキかキツネだろ」


「でも、騙すだけで、人を襲わないよね」


「人が襲われるとしたら、クマだろうな」


「クマちゃんには騙されない……あははっ、騙される前に、一撃でやられてるね」


「だから、あれも製作側が無知なだけだよ」


「そういえば、クマって日本だとかわいい系になってない?」


「森熊さんとか金太郎でも、悪役じゃないよな。

教訓として残すんなら、クマを怖いイメージで伝えないと駄目だと思うな」


「獣の奏者を思い出すね」


「ああ、人に慣れてても猛獣なんだぞって伝えてるよな。

オオカミもああいうスタンスで表現してほしいよな」


「犬やネコだって、子育て中とか怖いもんね」


「ああ、俺も自分ちの犬に噛まれたことがある。

気が立ってる時に、後ろから首輪外そうとしたらガブってさ」


「ワンちゃんには騙されない……あははっ、意味が分かんないよね」

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