第9話、ケガしたらなめるんだよね
ゼンマイもうまくいかなかった。
ちょっとしたくぼみで方向が変わってしまったり、車輪が空転してしまうのだ。
結局、小型化」して、投石器で投げることになった。
「はあ、私たちって役に立たないのね」
「いや、小型とはいえ爆弾は役に立つと思うぞ」
「それよりも、私たちの特別な力って何なのかしら」
「これだけやって何も見つからないんだ……
俺たちにはないんじゃないにか」
「そうですよね。
もしかしたら、恭介君だけが召喚される予定で、私たちはおまけとか……」
「それ、ありそうよね」
「そうだとしても、恭介だけに押し付ける訳にはいかねえよ」
「そうね。お茶くみでもなんでもやるわよ……
あれっ?」
「どうしたの?」
「さっき、指を切っちゃって、なめてたらどっかいっちゃった……」
「お前は犬か!」
「えーっ、普通なめるよね」
「うーん、ツバはつけるけど、なめないかな」
「おれも、ツバはつける」
「えーっ、変だな……」
数日後、訓練中に転んで、わき腹をザクっと抉ってしまった。
「グッ、ちょっとやばいかな……」
「私、治せそうな気がする……」
「いや、医者を呼んでくれ……」
「いいから」
智代梨は俺のシャツをまくり上げ、傷口をタオルでふき取った後、傷口に唇をつけた。
「う、うひゃ……っう」
数分後、智代梨が唇を離した時には、傷が消えていた。
「うそ……だろ」
「ホントに治った」
「どう、ケガした時には舐めるが正解だってわかったでしょ」
「あっ、ああ、ありがとな」
「どうだった仁君」
「なんていうか、気持ちよかった……」
「へ、変態……」
「じ、仁君……勃起してる……」
俺はあわてて股間を抑えた、
「ご、ごめん……」
「仁君もオオカミに変わっちゃうのかな……」
「オオカミ?」
「だって、男の人って急に狂暴になる時が……」
「マテ、お前たちはオオカミを誤解してるぞ」
「えっ、そっち?」
「オオカミってのはな、社会生活を営む崇高な生き物なんだぞ」
「エっ、だってオオカミちゃんには騙されないとか、人狼ゲームとか……」
「そうよ、三匹の子豚とか、赤ずきんとか、オオカミは悪者じゃないの」
「それは、間違った認識だ。
ホワイトクリスマスのオオカミを見ろ」
「なにそれ?」
「男の子が死んじゃうやつ?」
「そうだ。
もののけ姫とかもオオカミに育てられただろ」
「だって、あれはアニメだから……」
「数十年前までは、オオカミに育てられた子供って、実在してたんだぞ。それも結構な例があるんだ」
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