第8話、黒色火薬はできたものの……

「硝酸カリウムか、火薬を作るんだな」


「ああ、作り方は確認した。

風穴が空いたら決戦だ」


「決戦云々はともかく、やってみるか」


ジャンヌに協力してもらって、古い便所を探してもらう。


「ここは、古くからあったトイレですが、今はもう使っていません」


「これを壊して、掘り返してもらえないか。

うまくいけば、塩のような白い結晶があるはずなんだ」


硝酸カリウムが出てきたので、恭介に抽出してもらう。


「次は木炭と硫黄だ。

このあたりに火山はないかな」


「魔王城が火山ですが」


「ああ、硫黄なら採ってきたぞ」


「すまん、残りは木炭だな。

灰の混ざってない木炭がほしい」


「炭ですよね。暖房用がありますけど」


「まずは、木炭をすり鉢ですり潰す」


ゴリゴリと根気よくやっていく。

更に硫黄を加えて、皮張りの容器に移して硝酸カリウムを加える。

これを、木の棒でよくすり潰し、砂糖を加える。


「恭介、万力のでかいのを作ってくれないか」


「鉄製でいいんだな。簡単なことだ」


火薬を綿布で包んで、万力で締め上げる。

これを破砕し、乾燥させれば完成だ。


岩場で試験し、満足な成果を得た俺たちは、火薬を量産していく。


「問題は、どうやって魔王宮に仕掛けるかだ」


「投石機を作って放り投げたらどうかしら」


「それだけの空間があるかどうかだな」


「投石機とは、どのようなものでしょう」


「先に投石機の試作だな」


板バネを使ったものと、竹を使ったものを試作して、爆弾と同程度の岩を飛ばしてみるが、人力で絞ったのでは数メートルしか飛ばなかった。

そこで、歯車を使って、テコの要領で架台を引き寄せて何とか20m程度の飛距離だった。


「……無理じゃん。大型のものなら100mくらい飛ばせるだろうけど、現地で組み立てるのって無理だろ」


「振り出しに戻るか……」


「直接仕掛けに行くか……、どちらにしても現地の状況を知りたいな」


「では、実際に現地に入った経験者を呼びましょう」


ジャンヌの手配で、数人の兵士が集められた。


ざっと、全体の見取り図を書いてもらう。


「馬に荷車をひかせて突撃させるのはどうかな」


「結構急な勾配がありますし、現地まで馬というのは無理かと思います」


「風魔法で飛ばすとかは」


「無理ですよ」


「ゼンマイを使った荷車はどうだろうか」


「可能なのか?」


「多分できると思う」


こうして、ゼンマイの製作が始まった。

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