第7話、黒色火薬
「いったい、どうしたというんですか」
「いいか、人間が呼吸するのは、酸素という空気を吸って、体の中に取り込むんだ」
「はあ」
「ところが、火を使うと、空気の中の酸素を弱い毒性のものに変えてしまうんだ。
そして、それは空気よりも思いから、下にたまっていくんだ」
「はあ」
「だから、洞窟なんかは下に行くほど毒が強くなる」
「でも、私も何回か入っていますけど、一番下へ行っても無事に帰ってきていますよ」
「この毒が厄介なのは、短時間や弱い状態なら少し眠くなるだけなんだ」
「あっ、そういえば、下に行くほど欠伸をする人が……」
「それに、この毒は、判断力を鈍らせるから、下に行くほどつまらないミスが増えているはずだ。
どこかに風穴が空いていて、空気が流れているなら問題はないんだが」
「いえ、そういったものはないはずです」
「どうする?例えば風魔法で空気をかき混ぜて入れ替えるって手段もなくはないが」
「いえ、それが本当なら、ここはやめておきましょう。
城へも報告して、使わないようにしなければ」
「ああ、その方が無難だと思うぜ」
「まさか、魔王の迷宮も……」
「同じような作りなのかよ」
「はい。資料では火山の中腹から入って下に下っていく構造です。
しかも、奥に行くほど昏睡状態に陥る者が出てくるとか」
「それ、討伐どころじゃねえな。
まず、風穴を開けねえと」
「なぜ、魔物は平気なのでしょうか」
「酸素を必要としてねえんじゃないのか」
こうして、魔王討伐よりも土木工事が優先されることになりました。
「仁君はすごいんですね」
「いや、中学生の理科だろう」
「でも、理屈はわかっていても、いざ直面してみると気が付かないものですよ」
「いや、私も気づいていたぞ」
「ほらな」
「恭介君は、今日も土木工事の監督ですか」
「ああ。万全を期して、三方向から風穴を開けようってんだからな。
だけどよ、火薬とか作れれば、一気に魔王宮ごと吹き飛ばせると思うんだけどよ」
「じゃあ、火薬を作ったら?」
「いや、木炭と硫黄はどうにかなるんだが、硝酸何とかがよ……」
「硝酸カリウム、作り方と配合の比率はウィッキをコピーしてあるから分かるわよ」
「おま、何でそんなもん」
「前にアニメでやってて、ホントにそんな簡単に作れるのか調べたのよ」
「ああ、俺も読んだぜ。
硝酸カリウムってのは、便所の床下の地面に堆積してるとか書いてあったよな。
これは、恭介の出番だな」
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