第5話 噂 ~ 心の変化 ~
「先生、噂を耳にしたのですが、生徒との間に恋愛関係があるとか?」
校長室に教頭から連れて来られた。
「えっ!?」
「どうなんですか?」
「違います!」
「本当ですか?」
「はい」
「そうでしたか」
「嘘の噂ですよ。先生と生徒がそんな駄目ですから」
「では、信じましょう」
「はい。信じて頂いて結構です」
「それでは戻って頂いて結構ですよ」
「はい。失礼します」
私は、朝の挨拶は出来ず、授業の為に、自分の教室に移動する。
「先生、大丈夫だった?」と、阿理守君。
「えっ?」
「体調」
「あ、うん」
「そういや先生、生徒と付き合ってる噂流れてんだけど本当?つーか誰?」
と、奈賀松君。
「いや…付き合っていないわよ」
「じゃあ付き合う前とか?キスしてたって話も出てんだけど」
「それは……じ、ジコです!」
「じゃあジコとはいえ、キスしてたって話は本当なんだ」
「まあまあ良いんじゃ?先生のプライベートなんだし」と、三樹君。
「まーな」と、阿理守君。
「ヤっちゃったら大変だろうけど」と、三樹君。
「………………」
≪本っ当!相変わらず!≫
≪大体誰のせいだと思って……≫
バン
教科書で教壇の机を思い切り叩く。
「大人をからかうのも大概にしなさいっ!ずっと夢だったのに、滅茶苦茶にしてほしくありませんっ!先生をからかってどうするの?学校は勉強をする所ですっ!恋愛するのも結構です!だけど!他人に迷惑かけたりするのは良くありません!時と場合をわきまえて行動しなさいっ!」
「………………」
授業する気に正直ならなかった。
「ごめんなさい……急遽、自習にします」
そう言うと、自習の課題を伝え私は一旦教室を後に席を外した。
「マジギレしちゃった感じ?」
「かもな」
その日の放課後誰もいない教室での事だった。
「先生」
「…何?」
「怒ってんの?」
「………………」
視線の先には三樹君の姿。
「その反応怒ってんだ」
「………………」
「でも、誰か分かってないなら良いんじゃ?」
「そういう問題じゃありません!とにかく、これ以上は私に深く関わらないで!」
そう言うと教室を出て行った。
それから一ヶ月が過ぎた頃。
噂は、どれ位残っているのか分からない。
未だに噂が残っている所もあるかもしれない。
"付き合っている"とか"いない"とか……正直、噂は自分が把握出来ないのが怖い。
「綾香ちゃん」と、三樹君。
ドキッ
胸が大きく跳ねる。
「名前じゃなくて、先生と呼びなさい」
「別に良いじゃん。チューした仲なんだから」
「あれは、ジコです」
「ジコって……あれが、ジコなら普段するキスどうなんの?」
「ジコはジコよ!早く帰り……」
グイッと引き寄せられたかと思うと、壁に押し付けられキスをされ、そのまま首スジに唇を這わす。
「ちょ、ちょっと……辞め……」
その時 ――――
「へぇー」
ビクッ
廊下側から声がし目を向けると、他のクラスの女子生徒の姿があった。
≪ヤバイ……≫
「噂も満更じゃないんですね?先生と彼って」
「………………」
「ち、違……」
グイッと私の肩を抱き寄せ私が言うのを止めるかのように三樹君は頭を凭れかけさせた。
ドキッ
「だったら、どうなわけ?あんたに迷惑かけた?」
「迷惑かけたとか、かけてないとか先生と生徒っていうのがどうかと思うだけよ」
「へぇー……別にあんたには関係なくね?」
女子生徒は悔しそうにしている。
「別にバラす気はないけど、こっちも黙っておかないから!」
女子生徒は去って行った。
「ちょ、ちょっと……」
キスされた。
「もういい加減に……」
グイッと抱きしめられた。
ドキン
「機嫌直せよ、先生。悪かったな。…だけど……マジだからあんたの事……それに……俺、アイツ嫌いなんだよ……」
「……えっ?」
「もしかすると何か仕掛けて来るかもしれねーけど……俺……絶対あんたを助けて守るから……だから俺の事、マジで考えてよ…先生」
そう言うとキスをされ、教室を後に出て行った。
ドキン…
ドキン…
胸がざわつく。
「………………」
「」
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