第3話 先生と生徒

それから数か月が過ぎ ――――



「いやぁ~、珍しいですね!」

「えっ?」

「実に珍しいっ!」

「何がですか?教頭先生」

「普通なら、この期間、警察沙汰になったりの不祥事があってもおかしくないのですが、雨月先生になってから何1つないので」


「あのー、教頭先生、それはどういう意味でしょう?平和で良いじゃないですか?それとも…何か問題有った方が良いのでしょうか?」


「いいえ、いいえ。いや、平和が一番ですよねぇ~」



私の前から去る教頭先生。





ある日の放課後。



「悪い。君とは付き合えないや」

「…そうか…」

「悪い」



女子生徒が去って行く姿。

告白現場と思われる男女の生徒の姿。


男子生徒は、私も良く知る彼、三樹 有哉(みき ゆうや)だった。




「へぇー」


「うわっ!」


「三樹君、モテ男なのね。今の子可愛かったじゃない?付き合えば良かったのに」


「だったら先生が付き合えよ」


「私はノーマルなので付き合えないです!」



私は去り始める。


「なあ、先生ってさモテてただろう?」

「えっ?」

「モテ過ぎて男苦手になったの?それとも他に理由あんの?それだけ美人なのに男は放っておかねーだろう?」

「さあね。下校時間過ぎたから帰りなさい」



私は去り始める。



「…俺…先生とマジ恋愛しようかなぁ~」




ドキッ




「えっ?」



足を止め振り返る。




「今、目の前にいる美人な先生、正直、俺の好みのタイプなんだよね~」





グイッと顎を掴む。



ドキッ



「ちょ、ちょっと…辞め…」



掴んだ顎を離す三樹君。



「お、大人をからかうのも良い加減にしなさい!」


「校舎内は先生と生徒。だけど、学校の外に出れば一人の男と女。そうだろ?」


「分かったような口を訊かないで!早く帰らないと知らないわよ!」


「そうカッカすんなって。はいはい、分かりました~、帰りますよ。先・生」



三樹君は、帰っていった。







ある日の朝。



ガラッ

引き戸が開く。




「あ〰〰眠〰〰」

「こらっ!三樹 有哉っ!今日も遅刻!?朝の挨拶と謝るのが先でしょう!?」

「はいはい、すみません。先生おはようございます」

「はい、おはようございます」


「朝からうるせーなぁ~先生」

「うるさいと思うなら遅刻する前に早目に登校する事!」

「はいはい」

「はい、は1回で良いから!」


「…綾香ちゃんって最近イライラしてない?女の子の日?それとも欲求不満?」


と、三樹君。





≪誰のせいよ誰の≫




「俺が相手してやろうか?」


「おーーーっ!大胆発言っ!」


と、三樹君の友達・奈賀松 卓也(ながまつ たくや)君




「ヤっちゃえ!ヤっちゃえ!綾香ちゃーん、相手してもらいなよー」


と、友達の阿理守 勇次(ありもり ゆうじ)君。




バン

出席簿で教壇の机を叩く。



「好きでもない人と、そういう関係になりたくないし先生と生徒ですっ!」


「じゃあ相思相愛ならOK?」と、三樹君。


「変な事言わないでっ!好きであってもなりたくないわよ!あなた達の頭の中はそれしかないの?」



私達のクラスは騒々しい中、H.Rが終わる。




数日後の職員室の朝 ―――



「おはようございます。雨月先生、顔が赤いようですけど大丈夫ですか?」



他のクラスの担任の先生。



「おはようございます。そうですか?もしかして頬紅つけすぎたのかもしれませんね?」


「頬紅ですか?」

「はい」

「そうなんですね」

「すみません…何かご心配お掛けしたみたいで」

「いいえ、いいえ」

「それじゃ」




私は職員室を後に教室へと向かった。





「はーい、席についてー」

「綾香ちゃん、顔赤くない?」と、奈賀松君。


「やっぱり頬紅のつけすぎかな?さっき、他のクラスの先生にも言われたのよね?」


「頬紅?いや…先生が言うの分かる気もするけど本当に頬紅のつけすぎ?」と、阿理守君。


「つけすぎよ。はい、出席とります!」




実は、熱があるのだ。


久しぶりの環境に疲れが出たのだろう?


今迄とは違う現代の学校に全神経と気疲れ。


家に帰ったら今迄にない疲労感が半端ないのだ。


そして、その日1日何とか乗り切り次の日ダウンしてしまうのだった。




「はあぁ~…一人って…こういう時辛いし寂しいし楽じゃないよね…」



私は溜め息混じりに言う。



ピンポーン



「誰?荷物じゃないだろうし。何かの訪問販売?無視無視」


「先生、いないの?」

「えっ!?せ、先生?」



私は玄関先に足を運ぶ。



カチャ



「えっ!?み、三樹君!?」

「風邪大丈夫?大体、昨日、無茶するからじゃん!」


「いや…な、何で?」

「はいはい、細かい事は後で。部屋入るぞ!」



私を押し退ける。




「ちょ、ちょっと待っ…」




ガクッ

何かにつまづきバランスを崩す。



「きゃあっ!」



ドサッ


三樹君の胸の中に倒れ込む。


ドキッ



「病人は大人しくしとけよな!」



フワリと抱きかかえられた。



「わ、わ…ちょっと…」

「しっかり掴まっておかねーと知らねーぞ!」



かあああっ~と恥ずかしくなる。


高校生なのに、やっぱり力がある。


お姫様抱っこをされている。




ドサッ


ベットに乗せた。

おでこに触れ三樹君の手。



ドキッ



「まだちょっと熱い感じ?キッチン借りるぞ !」

「えっ?あ、うん…」



すると、何か料理をしだした。



しばらくして―――




「ほら」


「わあ♪お粥」

「お口に合うかは知らねーけど」

「いただきます♪」



一口食べると、お口の中に広がる。


すごくおいしい




「それより、何で家を知ってるの?」

「校長に聞いた」

「えっ?」

「いや、家の両親が校長と同級生だから、無理に頼んだ」

「いや…だからって…」


「とにかく早く治して学校に来いよ!つー事で帰りま~す」


「えっ?帰るの?」

「帰るし!何?寂しいの?」

「寂しくないわよ。早く帰って!お粥ありがとう」

「いいえ。でも、お礼は体で」

「あのねー」



グイッと引き寄せ、おでこにキスされた。


ドキッ



「体ゆっくり休めな。じゃあな。お邪魔しました」




三樹君は帰って行った。








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