第6話 恋愛よりも友情
「夕哉君、私と付き合って」
「悪い…。俺…まだ彼女いらないから」
「…そうか…」
「今は友達(ダチ)と遊んでいた方が楽しいから」
そんな中、一足先に早く散歩に来ていた私は、キラは何かに気付いたのか、突然走り始めた。
「えっ!?きゃあっ!な、何?どうし…」
私の視界に入った2つの人影。
≪マズイ!ヤバイっ!≫
「き、キラッ!待っ…待ってっ!そっちは……キラッ!行ったら…駄目…」
「ワウワウ」
「犬?」と、女子生徒。
犬の勢いは半端なく強く、引き摺られるように私はお決まりのように転ぶ。
「ったぁ~」
キラは迷う事なく、飛び付く相手は決まっていた。
「きゃあっ!」と、避ける女子生徒。
「おっ!キラじゃん!」と、夕哉君。
相変わらず夕哉君に飛び付いた。
「夕哉君、その犬、知ってるの?」
「うん。家の飼ってる犬と仲良しだから飼い主さんも顔馴染みなんだ」
「そうなんだ…」
「キラ、飼い主は、また置いてきぼりか?」
「ワウワウ」
「ワウワウって!そうだよと言わんばかりに」
「すみませーーん」と、私。
「えっ!?女の人!?」と、女子生徒。
「うん」
「すみません、怪我ないですか?」と、私。
「はい…まあ…ごめん…それじゃ」
女子生徒は慌てて逃げるように走り去った。
「ご、ごめんっ!今、彼女誤解したよね?」
「えっ?」
「彼女なんでしょう?」
「いや、大丈夫だよ。告白されただけで断った所だったから」
「でも…」
「大丈夫だから心配しなくて良いよ」
「………………」
「そんな顔しなくても本当に大丈夫だから」
「そう?」
「俺、まだ彼女欲しいと思わなくて。友達(ダチ)と遊んでいる方が、すっげー楽しいから、まだ恋愛は必要じゃないから」
「そう?」
≪…あっ…そういえば、私…この前、夕哉君に恥ずかしい事言ったんだっけ?≫
≪恋人同士じゃないのに…あんな事…≫
「どうかした?」
ドキッ
私の顔をのぞき込むように言う夕哉君。
間近にある顔に胸が大きく跳ねた。
「う、ううん、大丈夫!この間はごめん…恥ずかしい姿…」
「大丈夫だよ。気にしても」
「えっ?き、気にしてもっておかしいよ」
私は笑った。
私達は色々話をしていた。
ある日の学校での事。
「魅憂、夕哉君と良く会ってるって本当?」
「良く会ってるっていうか……家の飼い犬の散歩コースに夕哉君と偶然に会う事は多々あるけど」
「そうなんだ」
「あっ!ごめん…夕季、夕哉君が好きなんだよね?気が利かなくてごめん……。イイ気しないよね……」
「あ、良いの、良いの。別に責めるつもりはないから大丈夫。話は夕哉君から聞いてたから。メル友だし」
「そう?本当ごめん…」
「大丈夫!」
≪メル友なんだ……≫
その日の散歩の時。
「キーラー、帰るよー!あれ?いない。キーラー」
「魅憂ちゃん。キラなら俺の馬鹿犬とジャレ合ってるよ」
ドキッ
何故か胸が大きく跳ねる。
「夕哉君」
「もう少し俺と付き合っちゃいなよ魅憂ちゃん」
私は付き合う事にした。
「なぁ、魅憂ちゃんの彼氏さんって、どんな人だったの?」
「えっ?彼氏?」
「うん」
「普通だよ」
「普通は難しい答えだね。良くも悪くもないみたいな」
「うん。……優しかったよ。お見舞いに行く度にお前もあきないなって言われてたっけ?呆れつつも笑顔で迎えてくれてた…行く度に痩せてる気がして…本当は辛いはずなのにいつ発作も起きるか分からないから…私は彼を失うのが怖かった…でも、私も笑顔でお見舞いに行ってたよ……」
「お互い笑顔で会える事が二人の生き甲斐だったんだろうな…彼氏さんも魅憂ちゃんといつ別離(わかれ)る事になるか分からないから毎日……不安だったんじゃないかな?お互い不安と闘いながら病院でデートしてたんだね?」
「病院…デート……そう…だね…」
私は彼氏の話をしていく。
夕哉君は聞いてくれた。
しばらくして ――――
「ワウ」
「うわっ!」
「きゃあっ!」
犬が飛び付く。
いつものお決まりのパターンだ。
「ライっ!お前はまたっ!飼い主が違うだろう?女好きの馬鹿犬!」
私達は帰る事にした。
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