第5話 思い出以上の想い
「なぁ、夕」
「ん?」
「やっぱり諦めた方が良いのかな?俺」
「えっ?」
「魅憂ちゃんの事」
「あー」
「だってさ彼女の彼氏、他界しちゃってる訳じゃん!」
「あーらしいな」
「やっぱ他界した人との思い出にはかなわないのかな?」
「思い出は思い出じゃねーの?まあ、俺は経験した事はねーから正直分かんねーけど…思い出を越える程、自分の想いが乗り越えないと難しいんじゃねーの?」
「夕…」
「付き合っていた相手が他界してさ、まだ何処か生きてる気がして踏み込めなくて今を至ってるんじゃねーの?」
「そうなんだろうな…」
一方。
「ねえ、魅憂マジで恋しないの?そのうち人を愛する事、出来ないよ!」と、夕季。
「…うん…」
「政貴君、魅憂の事マジみたいだし彼の良い所とか見つけて付き合ったら良いのに。いつでも引きずってると駄目だよ」
「うん…」
思い出は思い出に過ぎなくて
まだ心の何処かで
礼二が存在してる気がしてならなかった
でも
礼二はもういなくて
恋をする約束したけど
受け入れない自分がいた
ねえ魅憂
あなたは何を望んでいるの?
ねえ礼二
私は本当に次の恋は出来るかな?
人を愛する事
泣いたり
笑ったりして
恋愛を楽しむ事……出来ますか……?
「…夕季…私に…恋は…出来るかな…?」
「えっ?」
「…私に…思い出以上の想いを越える相手(ひと)…現れるかな…?」
「…… 魅憂……」
「ごめん…私…思い出は思い出に過ぎないのにね…ごめんね…夕季。心配してくれてるのに」
「…ううん…私こそごめん…無理言って…無茶苦茶な事言って…ゆっくりで良いと思うよ。ねっ!」
「うん…ありがとう…」
その日の散歩中 ――――
「魅憂ちゃん」
ビクッ
突然、声をかけられ驚く私。
「驚いたぁ~…夕哉君…だったんだね…」
「ごめん…驚かすつもりはなかったんだけど…それより最近どう?」
「えっ?」
「何か心の変化あった?」
「………………」
「その様子じゃないんだ」
こくりと頷く私。
「…ねえ…思い出を越える程の想いって何?」
「えっ?」
「どれだけさー、好きって言っても、その想いって伝わらない訳じゃん?君が思い出から抜け出そうとしない限り、きっと君は恋愛出来ないんじゃねーの?」
「………………」
「思い出は思い出に過ぎない。思い出の扉を閉めろなんて言わねーけどさ…ただ…もう少し思い出から抜け出して心開いてみろよ」
「…夕哉…君…」
「悪い…余計なお世話か…」
「…ううん…」
私は下にうつ向く。
彼に言われる台詞(ことば)が
痛い程
胸に突き刺さった
自分でどれだけ分かっていても
他人に言われると
もっと痛いよね?
天国に逝った
礼二にも
そう言われている
気がした……
「魅憂ちゃん…?」
「…ごめん…天国にいる彼氏にも…そう言われ…」
グイッと言い終える前に抱きしめられた。
ドキッ
「…魅憂ちゃんなら…大丈夫」
『魅憂なら…大丈夫…』
ドキン
≪えっ?礼二…?≫
『魅憂なら…大丈夫…』
そう言われた気がした。
バッ
抱きしめられた体を離す私。
「…魅憂…ちゃん…?」
「…ごめん……えっと…いるわけないのに彼氏の声がした気がしたから……」
「彼氏も心配してるんじゃないの?」
「えっ?」
「天国から彼氏が魅憂ちゃん頑張れって。君なら大丈夫だって…言っているんじゃない?」
私は、夕哉君の胸に顔を埋めた。
「ごめん…もう少しだけ…このままでいさせて」
「もう少しってどれ位?」
「えっ?」
顔を上げる目の前には夕哉君の顔。
ドキッ
「嘘だよ」
私の後頭部を押え顔を埋めさせた。
「特別な。…彼氏に妬かれるかも…俺」
「彼氏もだけど…政貴君が一番妬くよ」
「確かに!」
ねえ礼二
私
頑張るね
だから天国から
私を
見守っていて………
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