ダンジョン非常食場計画始動?

蜘蛛の魔物達は新たな拠点(巣)を作り、あれから数日が経過した。そう、オークの村を襲い、その半分以上を翌日以降のご飯にまわし、巣に選んだ洞窟を自分達が過ごしやすいように、それぞれ思い思いに拡張し、整えた。


しかし、貯めた食糧は次の日には無くなった。アラネアお母さんと息子蜘蛛だけならば数日は余裕で余る量なのだが、娘蜘蛛の食欲と消化能力は他の追随を許さないが如くフードファイター顔負けの食べっぷりである。まぁ、蜘蛛基準と邪神ちゃん基準での話ではあるが……。


「ムキュムキュ?」(ダンジョンでご飯食べて来て良い?)

「ムシュッ!?」(まだ食べる気っ!?)

「んー……ちょっと育てたいからダメ。ダンジョンから出たのと周辺の魔物や動物なら食べて良いよ」

「ムキュー」(はーい)


娘蜘蛛は、少し残念そうに巣から出て、周辺の餌を食べに向かう。そして、娘蜘蛛の姿が見えなくなると、アラネアお母さんは息子蜘蛛と向き合い、改めて娘蜘蛛の食欲を脅威と見なし、最悪の場合にと考えていたプラン……“ダンジョン非常食場計画”を実行するべく動き出したのであった!


では、このダンジョン非常食場計画について、邪神ちゃんがざっくりと軽く、簡単に説明してあげよう!


・まずダンジョンを1つ以上確保……完了

・中の強い魔物だけを先に狩り、娘蜘蛛に与えておく……今から実施

・娘蜘蛛が向かってない方から、ある程度の

魔物を大量に捕まえて、ダンジョン内で解放……今から実施

・ ダンジョン内にて、こっそり貯めたオーク達の魔核をばら蒔く……今から実施

・ダンジョンの入口から中に向けて魔法を練習がてらに撃ちまくり、ダンジョンの魔力量を増やす……これから実施

・ダンジョンの核とマスター(魔王)が居れば、それを見つけて、交渉をする……これから実施


と、なってま~す♪。まぁ、ぶっちゃけダンジョンマスター(魔王)にいたっては、私が直々に行けばあっさり終わるけども……面白そうなので見守るだけ。っと、さてさて、どうやら息子蜘蛛君が外で魔物を取りに、アラネアお母さんがダンジョンの中で作業と食糧確保か。というか……息子蜘蛛君?君の今のやり方だと……まぁ、所詮は弱肉強食の世界だから問題ないか?……いや、気づいたようだね。うんうん、麻痺毒からの拘束が一番安全に大量に運べるよね♪だから、その、大量に色々くっついた巨大粘着蜘蛛糸ボールはどうにかしようか。まぁ、大量に集めるには一番効率良いだろうけども……割りと死んでたり重症になってるのが多いし、何より剥がすの大変だからね?だから……良い方法が出来たんだから、巨大粘着蜘蛛糸ボールを振り回して木々を倒しながら移動するのは、もう止めようね?見晴らしは良くなるかも?だけどせっかくの獲物も逃げてるからね?というか、小さいのに意外と力持ちだったんだね。


「ムシュ?……ムシュ。ムシュムシュ~♪」(ん?……気のせいか。糸玉振り回しすの楽しいな~♪)


そして、一方のアラネアお母さんは、ダンジョン外で最初に狩り、こっそり貯めたオークの魔核をばら撒きながら、ダンジョン内を駆け回っては、餌の強さよりも、食べ応えのある大きい獲物だけを狙って食糧確保をしていた。ただし、ダンジョン非常食場計画の為、ダンジョンには急成長をして欲しいので、群れる魔物に対しては、頭を潰さないように注意し、広範囲の縄張りを持つような単独行動の魔物は積極的に狩り、狩る時は基本的に魔法のみを使い、ダンジョンの魔力を吸わないように注意し、自身の魔力をダンジョンに与えるようにする。そして、核やダンジョンマスターという存在が居るのか確認するため、ダンジョンの奥へと一気に駆け抜けていく。


 確認する必要性は、魔力が溜まって自然発生したダンジョンか、またはダンジョンマスターという存在が核を使って産み出したダンジョンかで対応が変わるからだ。前者であれば何も対応はいらない。安心して非常食場に出来る。問題は後者、ダンジョンマスターが居るならば、話をつけ、こちらの要件を呑まないならば……戦うしかない。ダンジョンマスターの強さは、基本的にダンジョンの深さによる。ダンジョンが例え一階しかなくとも、上や下、横にダンジョンの範囲が広ければ、そこのダンジョンマスターは雑魚ではない。自身も狩りをしたいという獣が大半だ。だが、このダンジョンは見た目的にも自然発生っぽいが、ダンジョンマスターがそう偽装する場合もあるのだ。油断は出来ない。


「???……ダンジョンボスらしいのが居ない?……あ!」


ダンジョンには自然発生だろうが、ダンジョンマスター産だろうが、基本的にヌシと思うようなダンジョンボスと呼ばれる魔物が居る。しかし……アラネアお母さんは最奥に着いても、ダンジョンボスに出会わなかった。魔力や感覚による索敵にも引っ掛かってない。本ダンジョンボスと思えるような強い魔物はどこ?……。と、アラネアお母さんが考えた時、思い出した。ダンジョン入口にはオークの村があり、襲撃した時に一番強いのはダンジョンから出てきたのだ。つまり、ダンジョンボスはもう倒した後であり、そのヌシがダンジョン外で活動出来ていたという事は、このダンジョンは自然発生のダンジョンという事である。何故ならば、ダンジョンマスターが居るダンジョンならば、ボスは最後の砦となる場合もあるし、ダンジョンマスターにとって、ダンジョンボスとは護衛だ。そんな存在がダンジョン外に出るなんて事は基本的にない。そして……そのボスの肉と魔核を息子と娘は食べたのだ。アラネアお母さんは行きよりも急いでダンジョン外に駆け抜けて行く。急がなければ、息子蜘蛛と娘蜘蛛の次の進化が始まるかもしれない!



ダンジョンの外に出たら、アラネアお母さんの目には、巨大な蜘蛛糸玉が目に入ったのだった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る