人間と別れた後の蜘蛛達
人間種達が洞窟から出て行って数日、変化は目に見えて出てきた。
「ムキュゥ」(お母さん、周りの御飯少なくなってきたぁ)
「ムシュ……」(だから、満腹になる量まで狩らないでおけばまだ取れるって言ったのに……)
「んー……たった数日少し狩らないからって餌は直ぐには増えないのよ。魔王が作った普通の巣とは違う、ダンジョン?と人間種達が呼ぶ場所だと毎日食べれそうだけど……なんか美味しくないのよね~。人間種達がうざかった位しか覚えてないし」
3匹は考えた。いかに安定して美味しい食糧を確保するかを……。しかし、それはアラネアお母さんと息子だけならば、実は何も問題なかった。2匹は娘蜘蛛よりもむしろ少食に部類される。ただただ、娘蜘蛛の食べる量がおかしいのだ。
「ムシュ……」(第一、実とか草でも美味しいのは有るのに……)
「ムキュッ!」(お肉が良いのっ!)
「あらあら。まぁ、現状は……また移動するしか思いつかないわねぇ」
「ムキュ?」(またお魚食べに湖に行く?)
「ムシュゥ……」(そのお魚捕るのボクになりそう……)
「んー、一度行った狩り場に戻ると、大抵うざいのが居るのが多いのよねぇ」
なのでまた、2匹の蜘蛛が向かいたい方向を言い、アラネアお母さんがその意見を合わせた方向に進む。今回は、洞窟を出て北に進み、次に東に向かう。尚、距離はアラネアお母さんの裁量である。
そして、そのルートは幸か不幸かゴブリンの巣だった洞窟近くの村から大きく離れ、逆にエルフ族の村近くの外周を回る形で、そこから東に進み、丁度良さそうな洞窟を見つけた。更に、近くには人間種にはまだ見つかってない状態のオーク達の集落にあるダンジョンも、周辺を軽く偵察がてらに狩りをして見つけた。
「どうやら、見つけた洞窟はあいつ等が彼処に引っ越す前の拠点かもね。今は……周辺とダンジョンで狩りをして過ごしているみたい。此処なら、前よりも長くは暮らせそうね」
「ムキュ!」(じゃあ、アレ全部狩って食べても問題ないよね!)
「ムシュ?ムシュムシュ……」(良いけど……まだ食べるの?洞窟にもある程度はご飯貯めて食べたばかりなのに……)
「ムキュ!」(まだまだ食べれるもん!)
「じゃあ……余ったら洞窟に運んで、ひとまずは狩りましょうか。ダンジョンは明日ね?」
「「ムシュ(キュ)」」(はーい)
そこからは、ただの蹂躙という名の狩りだった。ただし、ダンジョンにはまだ入らない。ダンジョン外の集落だけでも食糧としてはかなりの量になるからだ。まぁ、そう考えてるのはアラネアお母さんと息子蜘蛛だけで、娘蜘蛛は食べ放題パラダイス位にしか考えてない。
そして、アラネアお母さんだけは、ここなら息子達の次の進化にも申し分なく、餌は途切れず、自分と同じか1つ下位にまで進化出来る容量があるのではないか?と、簡単な将来設計というか、生活設計を考えていた。
だがしかし、そんなアラネア達をこっそりしっかり観察している邪神ちゃんだけは、更に広い視野を持って、周辺の村や街、国の動向にも目を向け、大事な大事な玩具の管理……もとい、自分の眷属だと(勝手に)思っている可愛い(面白い)蜘蛛の魔物達を見守るのだ。間接的に、物理的に、神の神業たる奇跡までもを使ってでも。
「……ケプッ」
「……ムシュゥ?(嘘でしょ?)」
「あら?あらあら。食糧確保って言ったのに、自分で狩ったのは全部食べちゃったのね」
アラネアと息子蜘蛛はオークを狩っては巣に運んでいたのだが、気がつけば集落跡という状態のオーク村の中で、娘蜘蛛だげが、お腹を上にひっくり返った状態で、ポンポンと満足げにお腹を脚で軽く叩いて満足気に居たのだった……。
尚、オーク村のオークは100体以上であり、半分以上は巣に運んでいて、残りは全て娘蜘蛛のお腹の中……恐るべき許容量というよりは消化能力である。
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