新たな出会い?と魔法について

洞窟を仮拠点として確保した後、アラクネお母さんは軽く洞窟の改造を始め、娘は確保した餌の量を増やすために洞窟を出て獲物を狩りに行き、息子は洞窟内の探検を始めた。


「ムシュムシュ~(さーて、此処には何が有るのかな~)」

「見つかっ……は?」

「蜘蛛……の魔物?」

「かっ、可愛い!!」

「「えっ!?」」


洞窟内を探検していた息子の蜘蛛の魔物は、とうとう気配を消したり結界を張っていた人達が居る食糧保管場所だった所に入ったが、冒険者の男とエルフの少女の方は、まさか蜘蛛の魔物が一匹だけで、それも普通のよく見る魔物ではない蜘蛛の魔物であり、なにより、その大きさが小さいのに驚いたのだが、エルフの姉の方は何と、自ら張った結界から出て、蜘蛛の魔物を抱きしめて撫で始めたのであった。


「ムシュッ!?(何っ!?)」

「ふへへ~……素晴らしい撫で心地です!」

「……おい、嬢ちゃんの姉って」

「昔から蜘蛛とか蛇とか何故か好きで、こっそり飼ってたのは知ってたけど……魔物も良いだなんて……」


もはやこの中で現状についていける人物は居らず、状況確認したり、呆れたり、ひたすら可愛がったり、混乱してされるがままだったりと、混沌な状況が続くかと思われたが、息子の悲鳴?(叫び?)を聞き、母親である彼女が作業を止めて現場に来るまで、そう時間はかからなかった。


「大丈っ……人間?なるほど、オーク達の食糧庫だった場所か」

「うおっ!?って、人の言葉を話せるのかっ!?」

「うわぁ……はっ、お姉ちゃん、危ないから結界内に戻って来て!!」

「ここですか?それともこっちですか?(さわさわ、さわさわ)」

「ムシュッ、ムシュ~(あははははっ、くすぐったいよ~)」

「ん?結界?……あぁ、これですか」

「へ?」

「は?」


アラネアは大鎌を取り出すと、軽く振るっただけでスパッと結界を破壊してしまった。 それを見て、2人の人間は状況が理解出来ない顔をするが、アラネアの視線はそんな2人よりも息子と息子をなで回す人間に向いている。



が、エルフ姉が落ち着くまでにかなり時間がかかった。というのも息子が無抵抗すぎたせいでもあるが、母親の存在に息子が気が付かなかったというのもあり、妹が食糧を運び込んで2匹を探して見つけるまで彼が解放される時はなかった。


そう、エルフ姉が落ち着いたのは妹もなで回したり、乗ってみたりしようとして妹に威嚇され、妹から慌てて離れようやく落ち着いたのだ。(ただし、妹から離れる際、息子君は再び抱き上げられていたりする)


ただ、魔物である彼女等が目の前の人間を襲わない理由は実に簡単であった。アラクネお母さんことアラネア曰く、食べる量が少ないし、食べるのに衣服や鎧等が邪魔(食べれる物じゃない)でいちいち剥がしたりするのが面倒臭く、巣を破壊されたわけでもなく、脅威でもないからである。(ただし、息子サイズの一般的な蜘蛛や大型サイズの蜘蛛の魔物はこの定義には当てはまらない方が多いのだが)



で、三匹と3人は現在、洞窟内でアラネアが主に改造した広い場所に移動しており、三匹はのんびりと、人間側は1人以外は安全とは思えず、周りを見ながら落ち着きがない。


「思わずアレの後に着いてきたが、どうする?」

「此処から出て近くの村なり街に行くべきだと思いますけど……姉が」

「まぁ……そうだろうな」


2人は冷静にこの状況に対して考えるも、こんな状況に対して1人。


「あ、お腹空きました?なら丁度オークの死体が有るのでオーク肉のステーキ作りましょうか?」

「ムシュ?(ステーキ?)」

「美味しいですよ?生も良いでしょうが、調理したお肉も気に入ると思います!」

「ムシュ?ムシュ!(美味しいの?食べる!)」

「アレ……ですから」

「アレだからなぁ」


エルフ姉はそれはもう、嬉しそうに蜘蛛の魔物(息子)の世話を焼く。そんなエルフ姉を、とても非常に残念な人を見る視線を2人は向けていた。


「ムシュッ!?ムシュムシュ!(火っ!?何も無いのに火が出た!)」

「ふふふ、これは魔法です。結構便利なんですよ?」

「ムシュ?ムシュ!(魔法?僕、魔法知ってる!)」

「また後で覚えましょうね?」

「ムシュ!(うん!)」

「?……もしかして魔法が使えるんですか?種族固有の能力じゃなくて?」

「えぇ、沢山貰ったのよ。本」


そう言ってアラネアは数冊の本、邪神ちゃんから貰った魔導書を取り出して見せ、息子蜘蛛は水の玉を空中に生み出していた。


「は?」

「へ?」

「わぁ!凄いです!」


息子蜘蛛が水を生み出したのを見て、人間3人がそれぞれ驚きの表情をみせる。まぁ、一名だけ驚きの意味合いが違うのは言うまでもないが。


「いやいやいや、魔法ってんな簡単に出来るもんじゃねぇし、第一、魔物に魔導書を渡す人間なんていんのかよ!?」

「確かに……貰ったのではなく、拾ったの間違いでは?」

「この子は元々魔力が高かったから。後、貰ったのは人間じゃなくて、神様?よく分からない存在。人間みたいな見た目だけど……魔力とか存在感が普通じゃない存在」

「神からっ!?」

「それって……」

「え?じゃ、じゃあ……あなた達は魔物じゃなくて神獣様?」

「ムシュ?(神獣?)」

「人間が言う、その定義がよく分からないけど……多分違う」


等と話していると、突然、空間に亀裂が入り、パリーン!っと音を立てて空間に穴が空いたと思ったら、そこからとてつもない気配の存在が現れた。


「はいはーい。呼ばれて飛び出て邪神ちゃん♪え?呼んでない?でも来ちゃったものはしょうがないよね!というわけで、此処からは僕が話してあげよう。あ、ただの人間種じゃ耐えられないかな?それじゃダイスを3つ投げてSAN値チェック……まぁ、無理か。っと、はい。これで大丈夫でしょ?」



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