邂逅、いいえ、必然の出会いです

こうして、僕と妹は安全な巣を共同で作りあげ、今は狩りに出てます。何故って?お腹が空いたからだよ!餌が罠にかかれば良いけど、空腹には勝てないよね。ちょっと大きめに作って罠も設置したから結構糸を使って体力が減ったんだよね。まぁ、狩りから帰ったら罠を見て、罠に餌がかかれば非常食にもなるし2倍おいしい。まぁ、妹を説得するのにちょっと時間かかったけどさ。


「ムシュッ!(準備良い!狩りの時間だ!)」

「ムキュウ(お兄ちゃん、あれ)」


と、早速妹が餌を発k……えぇと、胴が長くて、手足が無くてデカイのが居ました。うん、これは……とりあえず様子見して狩れるタイミングを計ろう!これは決して逃げではない!ご飯をゲットするための作戦だ!


「ムシュッ!(とりあえず天井の影に逃げよう!)」

「ムキュッ!(賛成!)」


ひとまず、物陰に隠れて相手の様子を観察してみる。うん、うねうね動いてるけど、今の所は俊敏に動き回りそうな素振りはないし、速さはこっちが勝ってるかも?……でも大きいし、暴れられても困るし……そうだ!


「ムシュ、ムシュムシュ……(マイシスター、良い事思い付いたからちょっと聞いて……)」

「……ム~、ムキュムキュ……(……え?でもそれだとお腹が……)」

「ムシュ。ムシュムシュ(大丈夫。絶対あの大きな餌でお腹一杯になるから)」


何とか妹を説得し、2匹で作戦行動に移る。作戦は至ってシンプルだ。天井に糸を張り巡らせ、あの太くて長いだけの餌の頭付近と尻尾の先の方に糸を絡ませて吊り上げて、更に糸を絡ませるだけ!


これならば、暴れられても此方にはそんな大怪我になるような事態にはそうそうならないはず。それに餌に食べられるという事態も起きない。それに、大事な妹に危ない事はさせれないからね。糸を天井から餌に絡めてもらうのと天井に張った糸の補強が妹の仕事。僕は……大きな餌に糸を絡めて徐々に身動きを封じるのが仕事だ。ついでに餌に噛みついて、毒を注いで弱らせるのも仕事だけどね。 そして、入念に準備をしていざ決行!


最初の糸を餌の頭と尻尾の先に着けるのに成功、更に糸を増やして補強!次に、糸を壁や大きい岩に繋げて上手く餌を空中に引っ張りあげる!そして、餌に糸を巻き付けて身動きを更に封じ込めつつ、柔らかそうな所に噛みついて毒を注入!後は、動かなくなるまで糸と毒を餌に与え続けるだけ!


ようやく、餌は動きを止めて息絶えた。僕達の勝ちであり、かなり空腹の状態であり、疲労も高い。


「ムシュムシュ(とりあえず、少し食べて今日は寝ようか)」

「ムキュゥ(凄く疲れたぁ)」


こうして、巣に近い有り様の場所で、餌を少しだけ食べて、僕と妹は疲れから深い眠りに落ちた。危険な気配が、徐々に僕達に近づいて来てるのも気づかずに……。


次に目が覚めると、餌が来た方から、危険な気配が近づいて来ているのが分かった。けれども、肌では危ない!というのを感じても、頭では危険じゃない、と変な状態になっていた。僕は妹の方を見たけど、妹も似たような状態みたいだ。ただ、僕よりは身体が震えてて怖がってるようなので、僕は妹の側に行き、ヨシヨシと背中を前足で撫でてあげた。すると、妹はちょっと落ち着いたのか、身体の震えが止まった。ふぅ、良かった良かった。


「ムシュ!(とりあえず、ご飯にしよう!)」

「ムキュ(お腹はまだ空いてるからね)」


こうして、僕達はのんびりと昨日?仕留めた餌を食べ始める。狩りをしなくても、まだまだ、沢山おかわりできそうだ。しかし、餌を半分食べた時、それは突然やって来た。


「ムキュッ!?(何っ!?)」

「ムシュ……ムシュ?(何か来る……でも、危険じゃない?)」

「ムキュッ!?(何言ってるのお兄ちゃんっ!?)」

「ムシュ。ムシュムシュ(まぁ、落ち着いて。少し物陰に隠れて様子見しよう)」


餌をそのままに、岩影に隠れ、肌で感じる嫌な気配がする方をじっと見つめる。しかし、肌では危険と判断してるのに、頭は全然別で、危機感を感じていなかった。妹も冷静になると、僕と同じようで戸惑いが見て取れる。


「「■■ー■■■■■ー■■■■■ーーッ!!??!?」」


少しして、巣のようになっていたこの通路で、糸に何匹か餌が捕まりつつも、沢山の餌が通路を走り去って行った。僕達に気づいた奴はいなかったようだが……ヤバイ気配?から逃げてきたようだ。僕と妹は目を合わせ、逃げるか、やり過ごして餌を確保するか考えていると。


(まぁ、ご飯がこんなに。出ておいで?母はあなた達に危害を加えませんよ?)

「ムキュ……(お兄ちゃん……)」

「ムシュ。ムシュムシュ(出てみよう。何か言ってるの分かるし、お母さんらしいから)」


僕達とは違う言語のようで、頭に響いてくる声は優しく、きちんと理解出来る。妹は不安そうだが、不思議と僕は懐かしい感じしかしないし、大丈夫だという確信があった。なので、一応、何かあったら妹だけでも逃げれるよう、後ろから着いてきてもらい、僕達は母と名乗る存在の前に姿を見せる。


「やっぱり、2匹仲良く過ごしていたのね?素晴らしい進歩です!あぁ……やっと、やっと私は子育てが出来るのですね!」

「ムキュムキュ?(お兄ちゃん、何言ってるのか分からないよ?)」

「ムシュ。ムシュムシュ(そうだね。でも、どうしようか)」


歓喜するお母さんアラクネ。しかし、それとは別に子蜘蛛2匹は困惑してどうすればいいのか、いまいち現状を把握しきれていない。両者の間に敵対の文字はなく、ただ、興奮しているお母さんアラクネと、それを眺める子蜘蛛の構図はしばらく続いた。どれくらい続いたかというと、妹蜘蛛のお腹が空く位には続いた。


「あらあら、ごめんね?ご飯にしましょうか」


と、いうわけで糸にくっついたまま死んだ振りをしている餌を、アラクネお母さんはどこから取り出したか分からない大鎌で三枚に卸し、僕と妹は食べかけの餌を持って来て、それぞれ食事をすることにした。


だが、この場にツッコミ要員やら空気を読まない魔物、偶然やってきた冒険者等は皆無だった。何故ならば、まだまだ洞窟の浅い方で、本来なら奥に居るはずのアラクネが長時間居り、浅い場所に本来居る魔物は全員逃げ出し、少なくない数が洞窟から出ていき、近くの村やら街やらを襲い、冒険者はそっちの対応に忙しく、洞窟の中までは手が回らなかったのである。


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