今回こそは……

「あぁ……今回も」


アラクネは、自分の可愛い子達を産んだ場所を訪れていた。しかし、自分を恐れてか襲われたか分からないまでも、自分もそうだったため、同族争いが起きたのは分かっていた。分かってはいたが、毎回、可愛い子達に会いに来たのに誰も居ない。


惨状的には、今回も同族争いが起きたのは分かるし、産まれる前に喰われた子がいるのも分かる。自然界、所詮は弱肉強食、強さが全てだ。それ以外はほぼ、強者のみに許された余興、趣味、暇潰しに過ぎない。


「はぁ……餌も用意しといてもコレ……見張るにしても……私1人じゃ全員の世話なんて出来ないし……この本のようにはいきませんね」


まぁ、用意した餌を他の奴が来て食べた可能性も有るけれど……用意したのは蜘蛛の巣の中、私の糸を容易くすり抜けれるのは同族の蜘蛛だけだけど……私と私の可愛い子達以外は居ないし、産む前に他の前に産んだ子達は始末したから……やっぱり、今回産まれた子達しか居ないわけで……。


仕方ない、今回も諦めて、可愛い子達を一匹ずつ始末して次に期待しましょう。


「この本のようには、なかなか上手くいかないですね。……人間の真似事なんて無理なのかしら?」


そう、私は以前に倒した人間が持っていた物で、暇潰しになるような物を回収して、凄く勉強?という事をした。その中で興味深く、何度も読み、今では内容を全て把握している。最初は絵でしか理解出来なかったけど、何度か色々回収するうちに、人間という生物、そして文字や言語が分かるまでは勉強した。全てはこの本を理解するために。


しかし、いざ実践したくなってしてみたら……この現状。何ですか?種族の違い?別に此処から出て人間の赤子を拐っても良いけど、それは違う。私は私の可愛い子達を相手に、この本のように、『赤ちゃんと学ぶ子育ての基本』をしたいのだ。


「とりあえず、片付け……んん???……これは」


気分は最悪ですが。とりあえず、今回の子達を始末して、次の産卵に期待しようと同族の気配、まぁ、ある程度は繋がりが有るので、私の子なら何処に居るのか丸分かりなんですけど……珍しいですね。ちょっとここから遠いですが、2匹が一緒に居ます。いつもは他と同じで1匹ずつで群れたりしないのに……とりあえず、失敗作の子達には残念ながら養分になってもらって、それから会いに行きましょう。判断はそれからですが、希望というものを初めて感じました。


と、いうわけで、本を大事にしまい。早速、近場の失敗作から狩って行きましょう。希望というものを初めて手にしたからか、普段よりも足取りが軽く、ルンルン気分で狩ります。


「あぁ……早く会いたいですね。と、いうわけで、失敗作は死になさい」


 早速、1匹を手にした鎌で始末し、美味しく頂きます。

フフフ、待ってて下さいね?お母さんが直ぐ行きますからね!


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