僕、産まれました!

「……ん、そろそろね」


とあるダンジョンの奥深く、一匹のアラクネは何かを感じとり、ダンジョンのとある場所へと移動を開始し、それに伴い、ダンジョン内のモンスターがアラクネに道を譲るが如く、蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。


ダンジョンの入口に近いとある場所。


(ん?……ここは?……お腹空いた……狭いし暗い?……息苦しい、出れそうかな?)


周りを、蜘蛛の糸に覆われた高台のような岩場の上、それは殻を破り、今、この世に産まれた……兄弟達と共に。


「ムッ!ムシュッ!!(出れた!息が出来る!!)」


そして、僕の眼前に広がるのは、蜘蛛の同族食いの光景であり、まだ産まれてない卵すら狙う兄弟の姿であり、また、此方に目を向け迫って来る兄弟の姿だった。


「ムムムムム、ムッシュッ!!!!(やややややや、やばいっ!!!!)」


僕は身の危険を感じ、急いでその場から逃げ出した。そりゃもう、8つの脚を世話しなく動かして逃げた。そして、巻いたのを確認して安堵した。

そして、落ち着いてきて、さっきの出来事を思い出す。目の前に居た蜘蛛達が、兄弟だとはなんとなくは分かった。ということは、僕も蜘蛛である。だけど……お腹が空いてるけど兄弟達を食べようとは僕は思わなかった。というか襲いに来た兄弟が怖くて逃げ出した。まだ、産まれてない弟や妹を置いて……ん?何か背中というかお尻が重いような?……うん、後ろに敵無し。次いでに上!左右!……うん‼️異常無し。……でも重いんだよなぁ……。

(カサッ、パキッ)

何か、嫌な音が凄く近い所というか、まさか……ね。


「ムシュッ!(そりゃっ!)」


僕はタイミングを見計らってジャンプして素早く横に移動した。


「ムキャッ!?(痛っ!?)」


それは、間違いなくさっきまで僕が居た場所に落下して落ちて、可愛い悲鳴をあげた。


「ムシュ!ムシュ?ムシュムシュ、ムッシュ!(へい、マイシスター!大丈夫?おっと、僕は君を襲わないし、食べないから安心して、あ、僕を襲わないでね!美味しくないよ!)」

「ムキュッ!(御腹空いた、ご飯っ!)」

「ムシュッ!?ムシュムシュッ!!(ちょっ!?年長者の言うことは聞きなさい!!)」


産まれたばかりの妹に気軽に話しかけてみたら、まさか、他の兄弟と同じ様に僕を襲って来ました。えぇ。先に産まれた方が強いという事を理解して無いのだろうか?妹?もちろん、糸で拘束して反省させてます。まぁ、確かに僕もお腹は空いてるけどさ。……仕方ない。安全な場所に妹を移して……御飯を調達しよう!


と、いうわけで、周りを少し散策すると……居ました!ご飯(ゴブリン)が3匹!でめ油断は出来ません。ご飯(ゴブリン)も反撃してくるだろうし、奇襲で一気に倒してご飯ゲットです!まずは、天井に張り付いて慎重にご飯の上に移動!次に糸を出して網を作って……ご飯の一匹に発射!素早く糸を天井に着けて着地、次にご飯2匹が持ってる物騒な物(こん棒)に糸弾を発射、ご飯2匹に蹴りを入れようとしたら最初の一匹に脚が簡単に入っちゃって、2匹目に蹴りが届かないっ!?しょうがないので、糸弾を発射して怯ませてる隙に脚を抜き、最後の1匹に飛びついて噛みつき、毒を注入!……ふぅ、初めてにしては、なかなか良い狩りだったのでは?さて、空腹なので毒を入れたご飯だけ素早く頂いて……残り2匹は持ち帰って妹にあげなきゃ……生きてるよね?お兄ちゃんが急いで帰るよ!


「ムキュ……(ぐすん、私悪くないのに……)」

「ムシュッ!(マイシスター!ご飯持ってきたよ!)」

「ムシュッ!?(本当っ!?)」

「ムシュ(今、拘束を解くから、ゆっくり食べなさい)」

「ムキュッ!(わーい!)」

「ムキュム……ムキュ?(モグモグ……お兄ちゃんは食べないの?)」

「ムシュ!ムシュ?ムシュムシュ、ムシュッ!ムシュ?(食べて来たから大丈夫!良いかい?1匹で狩りをするより、2匹で狩りをすればこれより多く狩れるし、安全も確保出来る!それでも、妹は僕を襲うかい?)」

「…………ムキュッ!(…………お兄ちゃんを襲うの止める!)」

「ムシュ……ムシュムシュ(良かった……それじゃあ、食べ終えたらご飯を捜しつつ寝床を決めようか)」

「ムキュッ!(うん!)」


一時はどうなるかと思ったけど、話が分かる妹で良かった。まぁ、力関係を分からせてご飯で取り組んだ感は有るけど、結果良ければ全て良し!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る