100の遺言

@pasukaru2846

第1話 「訃報」

幹太が死んだ。

突然の訃報LINEが私の元に届いたのは昨日のこと。

幹太の奥さん、光さんからだった。


2年前の結婚式以来、お互い仕事も忙しく、久しく会っていなかったが、

まさかこのような形で再開するとは悔しくて仕方がない。


中二の頃、二人でクラスの隅の方からクラスを斜め上から見下していたと思い出す。皆んながゴールデンタイムのバラエティで盛り上がっていたが、私と貫太は専ら深夜番組の話でニタニタしていた。


「みんなが知らない面白いものを知っている。」


それだけで、ほかのクラスメイトより一つ上のステージにいると錯覚していた。

当時、私の友達は幹太だけだった。


その幹太がまさか自殺をするとは。悲しく怒り悔しく辛い。

思いのままに地元行きの新幹線に乗り込んだ。


新幹線内で気持ちを落ち着かせ、奥さんからのLINE文を読み返した。

=====================

圭吾さん

ご無沙汰しております。


加藤 幹太の嫁の光でございます。

突然のご連絡で申し訳ございません。

昨晩、加藤 幹太は29歳で他界いたしました。


圭吾さんは結婚式にもご出席していただき、誠にありがとうございました。

生前、主人は「俺の親友は圭吾だけだ」と聞いておりました。


突然にはなりますが、通夜を明日○月○日○時から行います。

喪主は私でございます。

ご連絡いただく際は、私の携帯090-0000-0000にお願いします。


圭吾さんにはご迷惑をおかけすることになると思います。

最後まで何卒、宜しくお願い致します。

=====================

この文章が届いた後、すぐに記載された番号に連絡をし、自殺だったと聞いた。

私以上に笑いが好きだった幹太が、こんなに笑えないものを私に提供するとは。

申し訳ないが、腹ただしいかった。


幹太の死面の鼻によく燃えるコットンを詰め込んで、火葬時、密かにボッと燃えるようしてやろうか。

祭壇の花をマリーゴールドで埋めつくし、行き過ぎたあいみょんファンみたいにしてやろうか。

仏教風のお葬式に神父をブッキングして参列者の宗教観むちゃくちゃにしてやろうか。

葬式で流れるBGMを「裸の心~お琴ver~」にして行き過ぎたあいみょんファンにしてやろうか。


幹太が死んだ状況でもくだらないことを思い出し、あの頃に戻った気分だった。

もう一度、話したかった笑いたかった。

こんなにも乗ることが辛い新幹線は初めてだ。


改めて、この文書を読み返していると最後の文に疑問を抱いた。


”圭吾さんにはご迷惑をおかけすることになると思います。

最後まで何卒、宜しくお願い致します。”


ご迷惑、、最後まで、、何が?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

100の遺言 @pasukaru2846

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ