9月6日(土)14:20 繁華街

映画が始まるまでの間、二人はショッピングを楽しみました。10万円を持った二人は無敵です。毎日の生活に役割を持つ家電も、他人との関係の中に価値があるブランド品も、二人にとっては何の意味もありません。余命一日の人間の需要にこたえる物の大半は、数千円もあれば十分に買えました。しかし、何でも手に入るようになってしまうと、かえって人の欲は膨らまないようです。男はCDを二枚、女は本を一冊買っただけでした。男はそのCDに収録されている曲を暗記するほど聞いていたし、女はその本を毎年のように読んでいました。二人とも、自分の好きな作家やアーティストに、最期のお金を使いたかっただけだったのです。

 いよいよ映画が始まる時間になりました。二人で3万円のプラチナシートで鑑賞します。



残金 男:45,637円(CD代、チケット代、ポップコーン代、飲み物代)女:46,232円(本代、チケット代、ポップコーン代、飲み物代)

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