ATMで10万円を卸すと、二人はデパートへ行きました。女の希望で、服を買いに来たのです。男にとって人生最後の日に服を揃えようという発想は意外でしたが、女の言い分には妙な魅力と説得力がありました。

「だって君、人生の最期を白シャツとGパンで迎える気かい？」

女は試着を繰り返し、時折男や店員に意見を求めながら何件か店をまわり、ワンピースとスニーカー麦わら帽子を買いました。身長が高く大人っぽい女に麻調素材のワンピースはよく似合っていました。

「随分と涼しげな姿になったね。とても似合っているよ。」

「どうもありがとう、夏が一番好きな季節なんだ。」

　男は近くのお店でスニーカーを買いました。女は少し不服そうな顔をしています。

「結局白シャツにGパンのままじゃないか」

「一点良いものがあると全体的に高級に見えるんだよ。それに言うだろ、お洒落は足元からって。」

残金　男：80,200円(スニーカー代)　女：62,600円（ワンピース代、スニーカー代、帽子代）

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい