第4話 痺れるようなあなたが足りない

 ススムは走り出した。これは夢だ、なかなか覚めないだけだと。階段をかけ上がって、踊場で涙が出た。遠くから数学のマエケンと呼ばれる先生の怒鳴り声が聞こえた。いつもと同じ、ではなく電撃の音が響く。



「ははは、マエケン、パワーアップしてる」


 ちょっと笑えてきた。



「笑ってる方がいいね」


 上から女の子の声が降ってくる。見上げると薄着の少女がいた。小学生くらいに見える。泣いていたのを見られて恥ずかしくなるススム。


「ここ中学校だよ」


「関係ない、まだつまらないの?」


「何の話?」


「せかい」



 彼女はそう呟くと階段をゆっくり降りてきた。



「人がたくさん、何回やっても同じ、つまんない」


「なんの話?」


「私何回も作り直して、途中まで行くけどまたやり直すの。ススムもあの時つまらないって」



 朝世界が変わった時、確かにススムは凍った坂道を登りながらそう思っていた。



「そうだけど」


「どう?この世界、面白いかな?」


 怯えるような、震えるような声だった。



「俺は面白くない」


「なんで!!!!???」


 さっきのマエケンの雷とは比べ物にならない音と光が襲う。痛みや痺れがない代わり他の感覚が狂う。



「どうして?いつもこうなの!?」


「俺はって言っただろ!?」


「そうだ、君には好きな力を選ばせてあげるよ、何がいい?なんでもいいよ!炎?水とか草、闇でも光でも、獣でも神様でもいい」


「なにいってんだよ」


「私なんでもつくれるから」



 そして耳を塞ぐススムの手を引く少女。

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