第2話 燃えるようなあなたになりたい

 遅刻せずに自分の席についたススムは、隣のマモルに話しかけた。マモルの顔はそのままだが、足が魚のそれだった。


「なあ、マモル?お前足どうした?」


「え!?ついに凍ったか?って凍ってねえよ、なんだよ」



 パタパタと人魚のようなヒレを揺らす。


「お、お前男なのに…昨日まで人間の足がついてただろ?」


「なにいってんだ?生まれつきこうだよ、ススムと一緒に風呂だって入ってただろ?近所の銭湯」


「入ってたけど」



 人間の足だったぜ、たしかに。言わぬまま飲み込んだ。次の言葉に驚いたせいもある。


「なんだ俺も人間にしたいのか?キスしてくれなきゃな?」


「き、キス!?それで元に戻るのか?」


「いやいや冗談だけどな?てか元からこうだってば!」


「ススム君、さっきから聞いてたけどひどくない?」


「い、委員長」


「マモルくんの足のこと、そんな言い方ないんじゃない?」


「いいって、ススム顔色悪いしなんかあったんだろ?それよりいいんちょ、あっためてー、寒くってさ」



 マモルの声に仕方なく委員長が手を出す。ふーっと息を吹きかけると温風が辺りを包んだ。他の生徒からもあったかーいと声が漏れる。



「ススム君、ちゃんと謝ってね」


「委員長まで。いや俺、ごめん、混乱してて」



 委員長が熱血なのはいつもどおりだし、マモルが冗談言うのだっていつもどおり。ススムの様子に気付いた委員長が保健委員のノゾミを呼ぶ。


「ススム君を保健室に」


「大丈夫?」



 ノゾミはススムを背中に乗せた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る