(二)-7
イリーネは私のことを大事にしていたが、その理由を誰にも話さなかった。だから彼女が亡くなると、親族が彼女の遺品を整理する際に、私の扱いに困ったらしい。美術品として価値があるものなのかどうか、と。
実際に私を作ったのはシュテファン・エルラーという若者は、全く売れていない芸術家であった。昔、ある貴族から彫像の製作を依頼されて私を作ったらしいのだが、その貴族は私のことを気に入らなかったらしく、受け取りを拒否された。契約金は半額しか支払われず、シュテファンは生活費のために私を骨董屋に売った。
(続く)
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