(二)-6

 イリーネは大戦争が終わった後、町のカフェで働き始めたのだが、そのカフェを経営していたのが、この実業家だった。ブリュッセルの他、国内の各地でカフェを経営していた。自分の店で働いているイリーネを見て、一目惚れしたのだそうだ。


 この実業家はイリーネのことを良く愛し、二男一女を設けることになった。一家はもう一度行われた大戦を生き延びた。

 結局イリーネは一〇三歳まで生きた。私はそれまでずっと、イリーネの寝室に何十年も、家族の写真と一緒に置かれていた。イリーネが車いす生活になり、高齢者施設に移ることになった際、私も彼女の家族の写真とともに連れて行かれ、彼女の枕元に置かれることとなった。


(続く)

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