(二)-2

 さらに翌日、その若者は再びやってきた。ショーウインドーを覗き込み、私の存在を確認した後、店の中に入ってきた。そして店主に私のことを買うと伝えた。


 彼の名はヘロルド・ブラウナーと言った。ベルギー陸軍に入隊してまだ一年ほどしか経っていない若者だった。彼は一時休暇のため町に戻ってきていたのだ。しかし近いうちに戦争が始まるかもしれないと聞かされて、買うことを決めたという。

 ヘロルドは会話の最後に「贈り物なんだ」と店主に言って、包装の際にリボンを付けてもらった。そして包装された私を受け取ると、走って自宅に戻った。私が自宅だと思った場所は、実際にはこの若者の自宅ではなかった。彼が走った先は自宅の隣であった。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る