12-2
一方仮想空間の内側では、解体戦士が独り電脳都市を彷徨っていた。今の状況から推測するに、この世界がすぐに消滅する可能性は低い。だが、いつまでも無事とは限らないし、奴らが攻撃を仕掛けてくる危険は残っている。襲撃を受ける前に、今後の対策を練らなければ。
考えをまとめるため、スパイナーはシャインシティを歩き回る。白い霧が立ち込め、ますます廃墟のような印象を強めている無人の街。ダークフォース基地は勿論、外部の世界のどこにも繋がっていない電脳の箱庭。しかし彼にとっては、本当の意味でここが世界の全てだった。
中央部のメインエリア、東部の住宅エリア、北部の開発エリア。どのエリアにも最早人の姿はなく、痛々しい侵略の爪痕が残るばかり。しかしその光景でさえ、街での生活や機械怪人との戦闘を同時に想起させ、彼には懐かしく思えた。どのような形であれ、遠からずこの世界と永遠に別れを告げる事を予期していたからかもしれない。
やがて彼は、最後に残った西部ベイエリアの片隅、小さな海浜公園に足を踏み入れた。思い返してみると、幹部3人のうち2人と初めて出会ったのはこの公園だった。奴らとの因縁は、この地から始まったと言えるかもしれない。
物思いに耽るスパイナーの背後にて、霧のスクリーンに黒い人影が音もなく浮かび上がる。人影は霧のベールを押し分けながら、解体戦士の方向へと歩みを進めていく。そして、影の
正体がはっきり視認できる距離になって、スパイナーは背後を振り返った。
「よう、来ると思ってたぜ。守護騎士プロス」
「どうやらバンリャを倒したようだな、解体戦士よ」
「ああ。これで俺はダークフォースを何人倒したんだ?」
「10人だ」
「相変わらず細かい奴だ。いや、お前は昔からそんな調子だった気もするな。何となくだが」
今から殺し合いを始めようという相手と、気付けば雑談をしてしまっているのは我ながら驚きだ。ひょっとして記憶を失う前は……否、これ以上は止めておこう。
それより、こいつには聞きたい事がある。先に出くわしたのが参謀だったなら即攻撃だったが、プロスならば聞いてみる価値はあるはずだ。その質問とは即ち、外の世界に__
「外の世界に出たくはないか?」
「なっ」
スパイナーの思考を先読みしているかのように、プロスが問う。
「貴様の考えそうなことなど予想はつく。そして偶然、俺はその方法を知っている」
「……本当だろうな」
「そんな事で嘘は吐かない。ただし」
プロスは一度言葉を切り、バイザー越しの眼光でスパイナーを見据えて言った。
「知りたければ、私を倒していくのだな」
何となくだが、この展開は予想していた。こいつは嘘はつかないだろうが、戦いで手を抜くような性格でもない。全力でぶつかり、打倒しなければ情報を入手する事はできないだろう。スパイナーは右腕をスパナアームに換装させ、守護騎士と向き合った。
「行くぞ、プロス!」
「__来い!」
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