第12話 激突する信念

12-1

 ダークフォース基地内、電算室。参謀カンディルは室内で一人、シミュレーションシステムの解析に勤しんでいた。参謀自らがシャットダウンした筈のシミュレーション世界は、再起動した後、外部からの一切の操作を受け付けず起動し続けている。ここまで来ると、前参謀ケルブの仕業であることはほぼ間違いない。恐らくこの事態を予め予測し、基地のどこかに予備電源を用意して、シャットダウン後一定時間で自動的に再起動するように仕込んだのだろう。


 勿論、基地内のどこかに隠されている予備電源を破壊すれば問題は解決する。だがダークフォース基地の地下は迷宮のように入り組んでおり、全貌を把握する者はダークフォース構成員の中にも存在しない。電力を供給しているケーブルの切断やメインコンピューターの直接破壊も考えたが、他のコンピューターのケーブルと複雑怪奇に絡み合っている上、どうやらこのシステムの一部が基地全体の制御システムと連動しているらしく、不用意に手を出せば制御システムに致命的な損傷を与える恐れがある。ダークフォースの財産全てを無傷で手に入れることを目的とするカンディルにとって、それは望ましい事態ではなかった。


「ケルブ……死人の分際で手こずらせてくれますね」

 残念だが、基地内のシステム系統を完全に掌握していたケルブの専門分野に素足で踏み込むのは得策ではない。幸い、他にも手はある。基地内全システムを強制シャットダウンし、初期化すればいい。だがそれを行うには、ダークフォース最高責任者「将軍」の権限を手に入れる必要がある。結局、他の幹部二人を排除しなければ目的の達成は不可能ということだ。遠からず自滅しそうなバンリャはともかく、厄介なプロスをどう片付けるか。全く、どいつもこいつも手間を掛けさせる__


 だが次の瞬間、カンディルの手間は半減することとなった。小さなモニターの一つ、ログイン者の状況を示す画面の表示が突然切り替わったのだ。「破壊闘士バンリャ」の文字が白から赤に変わり、下部に「敗北・死亡」というメッセージが追加されている。

「これは……」

 まさかバンリャがここで退場するとは、予想外だった。いやバンリャ自体の評価ではなく、スパイナーがあの状態から戦闘可能なまでに立ち直るとは。バンリャとスパイナーの立場が逆じゃなくて本当に良かった。手駒としてこれほど優秀な存在も中々いない。残る障害、プロスもついでに倒してくれれば、最高に都合がいいのだが。

 ……それにしても、プロスは一体どこに行った?先程から姿を見せないままだが__

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