10-3
次の瞬間、間寺は物凄い勢いで背後を振り返り、同時に右腕を高速でスイングさせる。
「!?」
間寺の突然の行動と人間離れしたスピードに唖然とするコウジ。その顔の真横を何かが通過。直後、彼の背後で破裂音と閃光が鳴り響く。
振り返ると、そこには悶え苦しむ博士の姿があった。閃光弾をぶつけられたのか、全身が硬直している上、周囲にはバチバチという音と共に火花まで舞っている。
「おい間寺!一体何を__」
声を荒げようとしたコウジだったが、博士に生じた変化を見てその声は止まる。突如として、博士の姿が歪み始めていた。その輪郭は小さいブロック状に分解されていき、やがて博士の全身にモザイクがかかったような状態になる。まるで電波状態の悪いテレビ画面にノイズが発生したかのように。
すぐにモザイクは消失したが、中から現れたのは博士ではなかった。青銅色の素体に、白衣を思わせる白い装甲。地面に届きそうなほど長い髪と顎髭は、よく見ると細いケーブルを束ねたような外観だ。初めて見るが、その姿は明らかにダークフォースの機械怪人のものだった。
「やっぱりそこにいたんだな。先代参謀!」
「せ、先代参謀?」
力なくその場に膝をつく謎の怪人。その姿に混乱するコウジは、間寺の言葉を繰り返すので精一杯だった。
「ああ。先代参謀のケルブは、ある日突然組織から姿を消した。どこかに潜伏しているとは思ってたが」
「そうか、騒ぎに紛れて博士に成りすましてたんだな。おい、博士をどこにやった!」
「そ、それは……違う」
「違うだと?一体どういうことだ。早く博士の居場所を吐け!」
詰め寄るコウジと、弱々しく声を出す怪人。
「違うのだコウジ、話を聞いてくれ」
「黙れ、これ以上博士のふりをするな!」
「フフ……フハハ……フハハハハハハハッ!」
その様子を眺めていた間寺が、突然狂ったように笑い始めた。体を折り曲げるようにして笑い転げる姿は、明らかに常軌を逸している。
「お、おい、間寺……?」
「フハハハハハハァ!……いや失礼、我慢できなくなりまして」
ようやく笑い止む間寺だが、その表情はニヤけたままだ。まるで人格ごと豹変したかのような言動に、コウジは困惑することしかできない。
「そろそろ限界ですかねぇ。それでは、種明かしと参りましょう!」
間寺が右腕を真上に伸ばして指を鳴らす。次の瞬間、彼の姿は一瞬にして消失。そこには別の人物の姿が現れていた。
ダークグレーの素体に、不釣り合いなほど派手な道化師風の帽子。見間違えるはずもない、それはダークフォースの現参謀、カンディルだった。
「なっ……貴様も間寺に成りすましていたというのか!?」
「全く、笑えるほど鈍いですねぇ。間寺なんて人物は存在しません。最初から私の変装なんですよ。後ろの人と同じくね」
「嘘をつくな!ダークフォース怪人は人間へは化けられない筈。博士だって……いや待て、後ろの人もだと?」
「はい、もう一つの種明かしですっ!」
カンディルがもう一度指を鳴らす。今度は空中に巨大なモニターが出現。映し出されたのはどこかの室内で、壁一面がモニターや計器類で埋め尽くされている。そして画面手前には大型のカプセルが並び、その中の一つにはカンディルが入っていた。
「……え?」
目の前のカンディルに視線を移すと、そこには既に怪人の姿はなかった。代わりにモニター内のカプセルが開き、中からカンディルが出てくる。怪人は後頭部に繋がれていたケーブルを抜き、モニター越しにコウジに向かって手を振る。
『これが答えですが、分かりました?』
今度はモニターからカンディルの声がする。だが、コウジには何が起きているかさっぱり分からない。
『フハハハハハ!分かりませんよねぇ!それでは私の方から真実を言ってしまっても、構いませんよね博士殿?』
「…………」
空戸博士、いや先代参謀ケルブは、うなだれたまま何も語らない。その様子を見たカンディルは、楽しくてたまらないといった様子で衝撃的な言葉を吐いた。
『要するにそちらの世界は、仮想現実の世界だったということです。分かりましたか?解体戦士、いや、先代破壊闘士のスパイナー殿?』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます