7-4*

__その時、どこからか彼に呼びかける声が響く。

「諦めるなスパイナー!完成したぞ、新たなる武器が!」

「は、博士!?」

屋上から見下ろすと、地上から声を張り上げる空戸博士の姿が見えた。その傍らには台車に乗った金属製の武器の姿も見える。では、本当に新たな武器が完成したのか?


「プル、なんだこいつは?邪魔をするなぁ!」

プロペラダークが機首のプロペラを回転させ、残っていた銃弾を容赦なく博士に掃射する。必死に逃げ惑う博士の姿を見て、コウジは迷わず屋上から飛び降りた。


「博士っ!大丈夫ですか?」

機銃の雨を避けながら博士を脱出させる。肩に銃弾を浴びてしまい負傷しているが、命に別状はなさそうだ。

「わしは大丈夫だ。そ、それよりあれを……」

博士は震える手で新武器の方向を指差す。

「とにかく今は奴を倒すのが先決だ。使い方は今までと同じだ。分かるな?」

「はい!」


コウジは右腕に力を込めて叫ぶ。

「アームチェンジ!」

換装システムが作動し、彼の右腕は新たな形態へと変化していた。拳銃を引き伸ばしたかのような、どこかで見覚えのある形状。これは……

「ネイルガンダークとの戦闘データから作成した武装。名付けてネイルガンアームだ」


狙撃銃のアーム!遠距離攻撃手段が欲しい今の状況では理想の武器だ。マインドヘルムを通じて、コウジの脳内にも使用マニュアルがインストールされる。


「プルルル、見つけたぞぉスパイナー!」

上空から下降してくるプロペラダーク。敵を仕留めるべくプロペラを構える機械怪人に向けて、スパイナーはネイルガンアームで狙いをつける。一瞬、赤い光点がプロペラ付近にちらついた。


「プル!?」

次の瞬間には、左手のプロペラの中央に釘弾が突き刺さっていた。軸を破壊されたプロペラは回転不可能となる。更に光の射線が走り、怪人の翼を突き刺す。プロペラダークは咄嗟に回避行動をとるも、回避寸前に高速の釘弾が翼を掠め、ヒビを入れていた。

「な、何だとぉ?」


困惑するプロペラダークとは対照的に、スパイナーはネイルガンアームの有用性を確信していた。射程距離、速度、精密さ。どれも一線級の使いやすさだ。威力は少々控えめだが、マニュアルによると溜め撃ちをすればその点も解消されるらしい。


「プルル、仕切り直しだぁ〜!」

不利を悟ったプロペラダークが、残ったプロペラをフル回転させて急上昇し、その場から脱出を図る。溜め撃ちを試す絶好の機会だ。スパイナーはヘルム内部のモニターで敵に照準を合わせつつ、ネイルガンアームにエネルギーを溜める。そして、敵の姿が太陽と重なった辺りで引き金を引いた。


「スナイパーブレイク!!」

超高速で射出された釘弾が太陽黒点を撃ち抜く。

「プル、千の風になっていくぅ〜!」

プロペラダークは太陽と重なりあいながら爆発し、一瞬だけ皆既日食のような景観を作りながら消滅していった。


「成功したようだな」

戦いを終えたコウジの元に、博士が覚束ない足取りで歩み寄る。コウジは博士に駆け寄って歩みを支えた。

「博士のお陰です、ありがとうございました。そして……済みませんでした、あなたを疑ってしまって」

「いや、わしの態度にも問題はあった。だが信じてほしい、わしはいつだって君の味方であり、ダークフォースの敵であることを」

「はい!」



コウジと博士が信頼を取り戻していたのと同時刻、ダークフォース本部では2人の幹部が会話をしていた。

「やれやれ、下っ端の皆さんも数を減らしてきましたねぇ」

「フン、雑魚どもが何匹出ようが結果は変わらーん」

「貴方はそろそろ出陣しなくていいんですか?守護騎士殿に先を越されますよ」

「そうだな、そろそろ出るかあ。スパイナーなど片手でぶっ壊あす!」

ダークフォースでもトップの怪力を誇る「破壊闘士」は、出陣の決意を固めて不敵な笑みを浮かべ、ウォーミングアップを始めた。

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