第7話 黒点を撃て

7-1

シャインシティ、空戸博士の研究所。解体戦士スパイナーこと玄場コウジは、博士にダークフォース参謀のことを報告していた。

「参謀カンディルか。話を聞くに、どんな手段を使ってくるか分からない、恐ろしい敵だな」

「はい」

「わしは今、新たな兵器を開発中だ。君も鍛錬を続けてくれ」

「分かりました……ところで博士」


話が終わったと思い後ろを向いた博士に、コウジが突然問いかける。

「メテオリオンがメテオエナジーを使用して戦っていたというのは本当ですか?」

「ん?ああ、そうだが__」

不意打ち気味の質問に博士は普通に返答し、すぐにはっとした表情になる。

「やっぱり、マインドエネルギーじゃなかったんですね」

「ま、待つんだコウジ」

「じゃあ博士は、どうやってメテオリオンを支援してたんですか?俺の手術の時には当然のように開発済みのマインドアーマーを出してきましたけど」

「いや、それは」

「それに、ダークフォース基地についてもそうだ。博士はなんだかんだと理由をつけて、未だに基地探しに協力してくれませんよね。本当は何か、隠していることがあるんじゃないですか?」

「…………すまん、そろそろ君の新しい武器の様子を見に行かなければ。また後で話そう」


博士は話を強引に切り上げると、その場を逃げるように離れていった。その様子を見て、コウジは溜め息をつく。今の反応からして、博士が俺に何かを隠しているのは疑いようがない。先日、間寺が吹聴していた博士への疑惑。その信憑性を、コウジ自身が認めざるを得ない段階に来ていた。しかし、それでも博士を信じたいという気持ちが彼の中にはあった。死にかけの自分を助けてくれ、ダークフォースと戦う力をくれた博士との絆を否定すると、スパイナーとしての自分自身をも否定してしまうような気がしたからだ。


きっと博士は、何か事情があって俺に情報を隠しているんだ。そうに違いない。コウジは自分にそう言い聞かせる。研究所内に警報が鳴り響き、機械怪人の襲来を告げたのはそんな時だった。



シャインシティ中央部、周囲をオフィスビルに囲まれたスクランブル交差点。その中心点は今、巨大な竜巻に襲撃されていた。

「ダ、ダークフォースだ!」

「早く逃げて!」

暴風に巻き上げられる車や木々、パニックに陥る人々。それを嘲笑うかのように、竜巻の内部から機械怪人が姿を見せる。オレンジ色の素体に、革ジャンやゴーグル付ヘルメットのような、昔の飛行機乗りを思わせる装甲。そして最大の特徴は、体のあちこちに付いている巨大なプロペラだった。背中に生えた巨大な翼の左右に一つずつ。胸部には飛行機の機首のような物体が設置され、その中心にも勿論プロペラが付いている。

「プルルルル!俺っちはプロペラダーク!これはほんの挨拶だぁー!」


プロペラダークはそう叫ぶと、両腕をまっすぐ前へと伸ばす。すると両手の代わりに装着されていた小型のプロペラが高速回転し、二本のミニ竜巻が発生した。荒れ狂うミニ竜巻はヘビのようにのたうち回りながら、逃げ惑う人々に襲いかかる。

「プルル、街ごと吹っ飛べぇー!」


「そこまでだダークフォース!」

その行く手を遮るように、玄場コウジが立ちはだかった。右手のナットクリスタルが輝くと、彼の姿は一瞬でマインドアーマーに包まれる。

「解体戦士、スパイナー!トゥッ」

彼がスパナアームを大きく振るうと、迫り来る二本の竜巻はあっさりと跳ね返された。

「プルルル、来たなぁスパイナー!早速始めるぞぉー!」

そう叫ぶと、機械怪人は両翼のプロペラを高速回転させる。すると瞬時にその場に巨大竜巻が発生し、プロペラダークの姿もかき消えた。

「!!」

スパイナーのマインドヘルムでさえ、姿を一瞬見失うほどの超高速移動。次に姿を捉えた時には、敵は彼の遥か上空にいた。

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