6-5*

戦場の役目を終えた屋上に、一陣の風が吹く。スパイナーが戦場を去ろうとしたその時、彼の直感は再び鋭い警告を発した。即座に身構える彼の視界に入ってきたのは、どこからともなく転がってきた丸い発光体。それはネイルガンダークの遺体に軽くぶつかると、一瞬後に爆発を起こした。


「おやおや、もう倒されてましたか。できればこの手で止めを刺したかったのですがねぇ」

爆風の中、軽薄な口調と共に機械怪人が姿を現す。胴体は、炭鉱夫を思わせる黒ずんだ灰色の素体。一方頭部には道化師のような派手な帽子を被っており、7つに分かれた帽子の各先端には四角いカンテラが吊り下がり、それぞれ別の色の光を発している。そのアンバランスな外観は、見る者に言いようのない不安感を与える効果があった。


「貴様は?」

「わたくし、ダークフォースの参謀を務めさせていただいているカンディルと申します。以後、お見知りおきを」

カンディルは大げさにお辞儀のポーズをとる。人を小馬鹿にした態度ではあるが、油断ならない相手なのは明らかだ。

「こいつは貴様の仲間ではないのか?」

「確かに協力者ではありました。貴方を倒すために、妹さんの情報と、爆薬も提供しましたからねぇ。ま、貴方を倒した後に死んでもらう予定でしたけど」

「……ゲス野郎め」


「そんなに怒らないでくださいよ。今回は貴方の勝ちを認めます。では、ご機嫌よう」

そう言い残すと、カンディルはすぐさま足元に煙玉を投げる。煙が晴れた頃には、敵の姿と気配は完全に消え失せていた。



危険が去ったのを確認すると、コウジはビルを飛び降り、妹を残してきた広場へと駆け戻る。ユキエは瓦礫のバリケードに隠れ、無事だった。

「お兄ちゃん!大丈夫だった?」

「ああ。ユキエの情報のおかげで、敵を倒せたよ。ありがとうユキエ、お前は自慢の妹だ」

「良かった。わたしも役に立てて嬉しい」

「よし、じゃあ帰るか」


コウジは妹と共に帰路につく。ひとまず脅威は去ったが、あの胡散臭い参謀はいずれまた何かを仕掛けてくるに違いない。だが、ユキエをはじめとする守るべき人々が街にいることを思えば、彼に負ける気は微塵もなかった。

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