5-3
シャインシティ北部開発エリア、輸送道路が立ち並ぶ工業区域。その中の一つの高架下に、ダークフォースの機械怪人が襲来していた。
「ゾリリリリ!我が名はシェーバーダークなり!」
素体の色は黒。胴体部分は、銀色の鎖帷子に似た装甲で覆われている。右手には巨大な電動シェーバーが接続され、左手にはスプレー缶のような物を装備している。頭部にはソーラーパネルのような長方形の物体が何枚も重なっていたが、それもよく見ると剃刀の刃だった。
シェーバーダークは右腕を掲げ、頭上の道路に向けて高々とジャンプする。右腕が道路の裏面に触れそうになった瞬間、シェーバーが勢いよく振動を開始。そのまま怪人が道路の裏をなぞって着地すると、数秒後にはシェーバーの触れたアスファルトが粉々に砕け散り、道路は真っ二つに分断された。
「ゾリリ!我が刃に剃り落とせぬ物は無し!」
ポーズを決める機械怪人の前に、一人の青年が駆けつける。
「シェーバーダーク、そこまでだ。マインド・イン!」
青年は光に包まれ、解体戦士スパイナーへと瞬時に姿を変える。
「ゾリリ、待っていたぞスパイナーよ。お主も剃り捨ててくれよう!」
シェーバーダークが再び右腕を掲げると、起動音と共に彼の全身から火花が走り、シェーバーが振動を開始する。そのまま怪人は、大型トラックのような騒音を響かせながらスパイナーへ向かって走り出した。右手の巨大シェーバーを勢い任せに叩きつけてくるに違いない。スパイナーも右腕をスパナアームに換装させ、迎撃に走る。
スパナアームと巨大シェーバー、二つの武器が今にもぶつかり合おうとする。その直前、怪人の左手が一瞬動いた。それを目撃した次の瞬間、スパイナーの視界は真っ白に染まる。
「隙あり!シェービングスモッグ!」
そう、シェーバーダークが左腕のスプレー缶を噴射し、シェービングクリームをスパイナーへ噴霧したのである。シェーバーに気を取られていたスパイナーは、予想外のクリーム攻撃を受けて動きが止まる。
「何っ!?」
「剃り捨て御免」
シェーバーダークが硬直したスパイナーを巨大シェーバーで殴りつける。轟音と共にスパイナーが吹っ飛び、数m先の地面に叩きつけられた。
「ぐっ__」
スパイナーはどうにか立ち上がるが、胸部のマインドアーマーが大きく抉れている。内部モニターによると損傷率は40%、もう一度同じ攻撃を食らえばアーマーの大部分は砕け、戦闘不能になるだろう。
「我が技を受けて尚立ち上がるか。まあ良い、次で沈めてくれよう」
シェーバーダークは勢いを止めることなく、スパイナーに再度突進を開始する。確実にここで自分を仕留める算段らしい。だが、相手の手口は分かった。スパイナーは右腕をドライバーアームに換装させて走り出す。
「ゾリリ!」
突っ込んでくるスパイナーに対し、怪人は中距離からスモッグを噴霧。周囲の景色は白一色となるが、スパイナーはスピードを落とさない。双方共に視界を奪われる中、シェーバーダークが右腕の巨大シェーバーを闇雲に振り下ろす。
白い霧の中に鈍い金属音が響き、一瞬後に視界が晴れる。懐に飛び込んだスパイナーは、シェーバーを左腕で無理やり受け止めると同時に、ドライバーアームを敵の胴体に突き出していた。その先端は機械怪人の胴体部、特にコアに向けて真っ直ぐ伸びていたが……
「ふん、甘いぞスパイナー!」
ドライバーの切先は胴体を貫くことなく、鎖帷子によって止められていた。更に鎖から火花が走り、ドライバーアームに電流が走る。
「ぐわあぁぁ!」
「ゾリリリリ!どうやら勝負あったようだな……む?」
悶え苦しむスパイナーに対し、トドメとばかりに右腕を振り下ろそうとするシェーバーダーク。しかしその直前、彼の全身から発せられていた騒音が止まりシェーバーも振動しなくなった。電流も止まったため、スパイナーは素早くアームを引き抜いて敵から距離を取る。
「残念だがここまでか。命拾いしたな」
シェーバーダークはあっさりと身を翻し、黒い紐のような物体を引きずりながら戦場を去る。後にはアーマーの大部分を損傷したスパイナーのみが残された。
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