4-3

翌日、シャインシティ商店街。耳障りな騒音がガンガン響き渡る中、逃げ惑う人々を蹴散らすようにして、ネジーの集団が通路の中央を行進していく。その集団の先頭に立っているのは、グレーの素体に料理人服を思わせる白い装甲、頭部に長いコック帽を被った機械怪人、その名もフライパンダークであった。彼の両手にはフライパンとフライ返しに似た武器がそれぞれ握られており、これらを互いに打ち付けることによって騒音を生み出しているのだ。


「ファッファッファ!さあ早く出て来いスパイナーよ」

「性懲りもなくやってきたなダークフォース!」

駆けつけたコウジを前にしても、フライパンダークは尊大な態度を崩さない。

「フン、貴様がスパイナーというわけか。残念だがプロス殿は、貴様の相手をしているほど暇ではないのでな。わしが軽く調理してやろう」

「ハ、大した人気だな守護騎士のやつは。マインド・イン!」


コウジはナットクリスタルを掲げてスパイナーに変身、そのまま一気に走り出し、敵との間合いを詰める。

「来い!」

フライパンダークが右手のフライパン武器を自らの上半身に押し当て、円形の鎧を装着しているような姿となる。その状態でスパイナーを待ち構え、彼のスパナアームによるフルスイングを胴体で受けた。

「!?」

スパイナー自慢の一撃はフライパン鎧にあっさりと阻まれ、鈍い音と共に跳ね返された。気を取り直し、敵のフライ返し剣による攻撃を捌きながら再度スパナで攻撃を加える。しかし、何度攻撃しても分厚いフライパン鎧によって完全にガードされ、全く手応えを感じることができない。


「ファッファッ。どうだ、プロス殿にも認められたこの鉄壁の守備の味は?」

「くそっ」

確かにフライパン鎧は非常に強固で、スパナアームの打撃も通じる気がしない。流石は守護騎士の部下といったところか。だが逆に、奴のフライ返し剣による攻撃もスパイナーにまともなダメージを与えられてはいなかった。ならば戦況は互角。突破口はどこにある……?


「……よし」

右腕の換装を解除したスパイナーは、フライパンダークの突進を真横に跳んで避け、そのまま電柱を蹴って敵のほぼ真上に跳び上がる。更に空中で体を捻り、敵の姿を背後から確認。__予想通り、奴は背面には鎧を装着していない。ならば!

「トゥッ!」

スパイナーは空中で姿勢を制御し、アームを再び出現させながらフライパンダークに向けて勢いよく落下、その勢いを乗せて敵の背面をスパナで殴りつけた。


「グファッ」

スパナは敵の背中にクリーンヒットし、フライパンダークは苦悶の声を上げながら地面を転がっていく。一方着地したスパイナーは即座に次の行動に移る。

今、敵は地面に横たわり、こちらに再度背中を見せている状態だ。姿勢を変えられる前に、速攻でけりを付ける!スパイナーの決意と共に、彼の右腕が高速で回転を始める。

「スパイラルブレイク!」

自らを高速回転させながら突っ込む、解体戦士渾身の一撃。直撃さえすれば、勝負を決めるのに充分な威力を持った一撃だった……だが。


「ファッファ……甘いわ」

彼のスパナは強固な鎧に阻まれていた。スパナが接触する寸前、フライパンダークはどうにか姿勢を動かすことに成功、敵の必殺技を受け止めていたのだ。直後、寺院の鐘を全力で撞いたような音と共にスパイナーは背後に吹っ飛ばされた。


「ぐぁっ」

スパイナーもまた地面に落下し、ゴロゴロと転げ回る。一方、フライパンダークはよろめきながらも、敵よりも一足先に立ち上がった。

「こ、これで分かっただろう。貴様の必殺技ではわしを倒せないとな。今回は退くが、次は確実に貴様を倒してやる。覚悟しておけ」

そう言い残すと、フライパンダークはネジーを連れて商店街から引き上げていった。

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