4-2

一方、シャインシティ某所のダークフォース基地内。帰還したばかりの守護騎士プロスは、大広間にて物思いに耽ける。

スパイナーの戦闘力は、予測通り脅威というほどでもなかった。破壊力は確かに油断ならないが、戦法は単調そのもので、こちらのレシプロシールドにも簡単に引っかかる。戦闘経験の差は圧倒的だった。当初の想定通り、プロスは容易くスパイナーを追い詰め、仕留める寸前まで行った。だが結局、彼は敵を倒し損ねた。その原因は、他でもないプロス自身の不調のためである。


あの時、敵に止めを刺す寸前、彼は視界の隅にハルマ将軍の姿をはっきりと見たのだ。無論、将軍は既に死亡している。その姿は一瞬でかき消え、幻覚であることははっきりと分かったが、プロスはその幻覚によって想像以上に心を乱されていた。

この基地が攻め込まれた日、プロスはダークキューブの輸送任務により不在にしていた。急報を受けて彼が駆けつけた時には、将軍のみならず当時の破壊闘士、参謀も全てメテオリオンに撃破され、組織はほぼ半壊。守護騎士の本来の任務である「将軍の守護」という役割を、彼は果たせぬままに終わったのだ。


とはいえ、ダークフォースの原則は実力主義。例え将軍と言えど、敵対者に倒されたのならばそこまでの存在であり、プロスが責任を感じる必要など全くない。だが心の奥底では、彼は将軍の最期に後ろめたさを感じていたらしい。あの幻覚を見た時の精神の動揺がそれを示していた。このような精神状態で戦闘を続けるのは、スパイナーが相手でも危険だ。完璧主義のプロスは咄嗟にそう判断し、戦闘を切り上げたのだった。とにかく次に戦う時には、幻覚など見ないように精神を鍛え上げ、完全な状態で奴と決着を_


「お悩みのようですな、プロス殿」

背後からの声に、プロスは振り返る。声の主は彼の部下、フライパンダークのものだった。

「スパイナーなど所詮は過去の遺物。プロス殿が気持ちを煩わせる必要などありませんぞ」

「分かっている。そんな事は」

「お言葉ですが、今のプロス殿は精神に乱れがみられますぞ。次の将軍を決めるこの大事な時期に、あやつなどに心を砕く余裕はありませぬ。あの粗暴な破壊闘士や陰険な参謀よりも、貴方こそが将軍に相応しいのは明白。あとは実力で彼奴等を黙らせるだけなのですから」

「フライパンダーク、そこまでにしておけ。行きすぎた賞賛は嫌味にも聞こえる」

「これは失礼。さておきスパイナーの対処についてはこの私、不肖フライパンダークにお任せくだされ。奴を破壊、いや解体してきてみせますぞ。さすればプロス殿の次期将軍への道は盤石になりましょう」


「……いいだろう、貴様に任せる。貴様の守備力はある意味では私をも超えている。仮に奴を排除できたなら、私が将軍に就任した暁に、貴様を次期の守護騎士に任命してやる」

「有難き幸せ。それでは早速準備にかかりますぞ」

フライパンダークは守護騎士に深々と頭を下げ、大広間を出て行った。

プロスはその後ろ姿を無言で見守る。確かに、あれこれ思い悩んでも仕方がない。仮にスパイナーがフライパンダークに敗れたなら、そこまでの存在だったという事。今こそダークフォースの原則に従うのだ__

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