2-2
「ギギギギギ!」
「わー!」
「に、逃げろー!」
平和なシャインシティの日常は一瞬にして破壊された。駅前広場に白昼堂々現れた機械怪人の影。銅色をした素体の全体に、歯車状のパーツが付着している。頭部には歯車が縦に何本も突き刺さり、コの字型をした両手の先端にも歯車が自転車のホイールのように付属。「歯車」のデータから製造されたダークフォース怪人、その名もハグルマダークだ!
「我こそはダークフォースのハグルマダークである!人間ども、ミニギアを食らえっ!」
ハグルマダークがそう叫んで全身のミニ歯車を上空に飛ばすと、歯車は手裏剣のように回転しながらビル街に突っ込み次々と小爆発を起こしていく。
「ギギギギギ!さあ出てこいスパイナーよ」
「言われなくても来てやるよ。マインド・イン!」
破壊現場に駆けつけたコウジは、早速ナットクリスタルを額に翳す。一瞬で全身がメタリックネイビーの鎧に包まれ、悪を挫く戦士が姿を現す。
「解体戦士、スパイナー!」
「ギギギ、来たなスパイナーよ。お前を倒して、我こそが次の将軍となるのだ!」
ハグルマダークがミニギアをスパイナーに向けて飛ばす。だが殆どの歯車は広場に乱立するオブジェに激突し、残った数個もスパイナーにあっさり叩き落される。
「ギギ、邪魔な物ばかり作りおって…ならばこうだ!」
ハグルマダークの頭部に突き刺さった歯車が回転を始め、彼の上半身に配された歯車も連動して回り始める。回転は多数の歯車を介して両腕を伝わっていき、最終的に両手の巨大歯車が丸ノコのように回転し始めた。
「ギギギ!」
ハグルマダークは高速回転する歯車を振り回しながらスパイナーに向かって走り出す。スパイナーは右腕を巨大スパナに換装させ、怪人を迎え撃った。歯車とスパナがぶつかり合うたび、鈍い金属音と共に火花が戦場を彩る。
「……」
金物での打ち合いを演じながら、スパイナーは思考する。敵の得物は重量級な上に回転しており、一瞬たりとも気を抜けない。現状スパナアームで対応できているが、突破口が見えない状態だ。……博士の言葉が再び脳裏を過ぎる。やはり俺は、スパイナーシステムの力を完全に引き出せてはいないのか?全力を出せていれば、この歯車さえも圧倒することができるのかもしれないが……
スパイナーが内心で思い悩む間にも、その全身はフル稼働で歯車の連撃を捌いていく。そして、何度目かのぶつかり合いの後、二人は同時に気付いた。広場の隅、柱の影の所に、逃げ遅れた市民が一人隠れていることに。
「ギギ!いい的はっけーん!」
ハグルマダークは残っていたミニギアを素早く投げつけた。歯車は回転しながら直線軌道で飛んでいく。その行く手には、足を竦めた少女の姿があった。シャインシティ中学の制服を着たその少女に、ユキエの姿がオーバーラップする。
「!!」
次の瞬間、スパイナーは全速力で少女の前に駆けつけ、歯車を防いでいた。
「大丈夫か?早く逃げろ」
「は、はい!」
少女を広場から逃すと、彼は怒りの表情と共に機械怪人に向き直る。
「貴様、よくもいたいけな市民にっ!」
得物を振り回しながらハグルマダークへと突進するスパイナーだったが、敵は彼の攻撃を易々と避けていく。
「ギギ、予想通りだ!お前の動きなど簡単に予測できる!」
怒りに任せたスパイナーの攻撃は一発も敵に当たらず、逆に巨大歯車の猛襲を立て続けに食らってしまう。
「ぐっ……」
バランスを崩し、片膝を付いたスパイナー。そこにすかさずハグルマダークが接近し、両手の巨大歯車でスパナアームを挟み込む。
「捕まえたぞ!」
二つの歯車が噛み合いながら回転し、両側からアームを軋ませる。前回のように此方から攻撃に移れない分、圧倒的に不利な状況だ。しかも、アームの付け根を挟まれているので腕を回転させることもできない。
このままスパイナーは為す術なくアームを破壊され、敗北してしまうのか?
__その時、突然戦場に突風が吹いた。
「ギ!?」
すると同時に歯車の締め付けが弱まり、コウジはすかさずアームを脱出させ、バク転して距離をとった。
「ギギ……邪魔が入ったようだな。勝負はお預けだ!」
ハグルマダークは何故か慌てたような様子で去っていく。そして戦場には、再び膝を付いたスパイナーだけが取り残された。
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