16.動機なんて大抵決まってる

もしかしたら、専門用語などが多くて読みづらいかもしれませんがご了承ください。

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クラスマッチも2日目、最終日だ。

残りは決勝トーナメントだけということで各競技6チームしか勝ち残っていない状況だ。

また、クジ運が悪いのかうちのチームは優勝するには残り3勝する必要がある。


先程蒼井に聞いたことだが、うちのクラスは女子のバスケも決勝トーナメントまで残っているらしい。


決勝トーナメントでチーム数も減っていて、タイムスケジュールも余裕があるので流石に応援にでも出向こうかと加藤と福島に誘われているので後で行こう。


まぁ1回戦で負けたら行かざるを得ないとも言えるが。


「いよいよだな」

「うん…そうだね」


オレは隣の祐人に声をかける。

祐人は緊張しているのかいつもよりも暗い雰囲気だ。

「大丈夫だ。策は考えてある」

オレは励ますために祐人にそう言った。


実際、昨日の3試合でデータは粗方とれた。

そしてうちの手札を加味して作戦は立ててある。

「うん、ありがとう。そうだね、僕が弱気でいちゃダメだよね」


祐人はオレの目を見ると首を振って、自分に言い聞かせるように言った。


先程とは打って変わって瞳に色が戻ってきたようだ。


「それじゃ、その作戦ってやつを教えてくれるかい?」


隣で聞いていた浅野がオレに問うてくる。


「そうだな…」

オレは浅野含めチーム全員に作戦を言い渡した。


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「それでは、決勝トーナメント第1試合、1-A対2-Dの試合を始めます!」


「よう、赤城。ちゃんと勝ち残ってくれて安心したぜ」

「先輩こそ。それで、約束の件覚えてますよね?」

「心配すんな。あんな衆人環視の状況で言ったんだ。二言はないさ」


祐人と2年の大友颯太おおともそうた先輩が話す。

この人が祐人に嫌がらせをしているという人だ。


まぁ動機は後輩の祐人が先輩より先にスタメンに抜擢されたからとかそういった理由だろうが。

表情を見るにこちらに負けるとは思っていないようだ。


まぁあちらはスタメンの8人のうち4人がサッカー部。

もう1人はベンチに控えている。


一応クラスマッチを盛り上げるルールとして、その競技の部活動をしている選手は半分までしか同時に出場できないというものが存在しているため、5人サッカー部という状況は避けることができた。


が、予選の試合は3試合で18得点と圧倒的な差で突破している。

ただぶつかったら正直勝てる相手ではないだろう。


それぞれがポジションに付いた。

うちのフォーメーションは3-3-1でオレはボランチのポジションだ。

フォワードに祐人、左に浅野、右に加藤、福島はキーパーといった位置に配置している。

ディフェンス3枚を素人に任せるのは危険だが、奪ったらとにかく前に蹴るように言い聞かせている。


「ピィー!」


キックオフのホイッスルが鳴った。

マイボールのスタートだ。


浅野とオレでパス交換をして祐人に出すタイミングを窺うが、祐人には最低でも2人、なんならカバーも含めて3人がマークに付いていた。


「っ…!」

祐人は必死にマークを剥がそうと動くが3人を剥がすのは容易ではない。


「どうしたよ赤城。それでもサッカー部のスタメンか〜?」


マークに付いている大友先輩は勝ち誇ったような顔で祐人に言い放つ。


祐人は悔しさを滲ませながらもマークを振り払うことに集中している。


オレと浅野、そして左側のディフェンスの生徒でパスを回し、相手のプレッシャーをしのぎつつキープする。


が、後ろで回しているためだんだんと低い位置になってしまう。

このままだとハメられて奪われるのも時間の問題だろう。

この位置で奪われると失点に直結するためそれだけは防ぐべきだ。


「今だ!」


ディフェンスからオレへのパスが弱くなってしまいオレがボールを受けるために下がったところで相手のプレッシャーが更に強くなった。


最高尾のディフェンスがハーフラインまで来ているほどだ。

浅野や祐人はともかくオレなら簡単に奪えると踏んでの指示でもあるだろう。



待ってたよ。



オレはトラップと同時に反転し前を向く。

そして即座に右足でアウト気味にボールを相手陣地のコーナーフラッグ目掛けて蹴り出す。


苦し紛れのクリアに見えたのか相手は安心しきって出足が遅い。


タッチラインを割るかに思えたボールはペナルティエリアの手前で選手に追いつかれた。


加藤だ。


陸上部で短距離走を専門にしている加藤は当然クラス1の快足。

練習を経てどこまでの強さなら追いつくかも立証済みだ。


ボールを左側で回していて、祐人もマークを外してパスを貰いに行くフリをして左サイド寄りにポジションを取っていた。

そのため、相手は誰も右サイドに選手を残していなかった。


相手のキーパーはサッカー部じゃないこともあり、ポジションも高い位置を取ってるということもなく問題なく加藤はキーパーと1体1の状況を作れたということだ。


素人のキーパーに止められるはずもなく、加藤は冷静に1体1を制した。


1年A組 1-0 2年D組

得点者

加藤清隆


「しゃぁー!!!」

「流石だね黒田君、君の読み通りだ」


点をとった加藤はオレのそばに来てハイタッチをし、浅野はオレを褒めそやす。


まだこんなもんじゃないぞ。


大友先輩には悪いが、完膚なきまでに叩きのめさせてもらおう。




「へぇ…あんな選手がいるのか。後で祐人か秀俊に聞いてみよう」



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