7.テスト前だけ勉強会しがち

あの後、白石としばらくお茶を飲んで夕方には帰ってもらった。

いくら同じマンションと言えども女子を遅くまで帰さないわけにはいかなかったのだ。

それに、あまり長居されるとまた何かボロが出ないとも限らない。

キッチンを見せるわけには行かないし。

そういう意味でも早く帰したかったのだ。


紆余曲折あったが、大きな面倒に繋がることなく白石の件を解決することができた。

少々疲れたがようやく肩の荷が下りた。

結果としては上出来と言えるのではないか。


この土日は家から一歩も出ない退廃的な時間を過ごすことを心に誓い、オレは就寝した。


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そして来る月曜日、オレはいつも通り登校して席でスマホをいじっていた。


「おはよう真」

「今朝は早いわね」

祐人と蒼井だ。


「おう、おはよう。土日に何もしていないからな。早く起きれたんだ」

オレは2人に返答する。


「来週から中間テストだって言うのに随分余裕じゃない」

「まぁ実際真なら余裕だろうけどね」


2人が言うように来週から中間テストが始まる。

高校生初のテストだ。


「別に余裕ってわけじゃない。ただ先週は疲れたから気が乗らなかっただけだ」


オレはそれっぽいことを言って誤魔化す。

正直、高校生になって1ヶ月ほどしか経っていないため、テスト自体は難しくないだろう。

だが、それをわざわざ口にする必要はないからな。

それに、まだクラス内カーストも定まっていない(白石を除く)のに頭いいキャラにでもなってしまったら目立ってしまう。

少しでも面倒事のリスクは避けたい。


そんな感じでテストについて話していると、教室のドアが開いた。

白石が登校してきた。

クラスメイトが次々に挨拶し、談笑を始める。

いつもの光景だ。

白石は多数に話しかけられるのに未だに慣れないのだろうか。対応に困っている。

そんな中白石はこちらを一瞬見たがすぐにクラスメイトの方に視線を戻し話していた。


良かった。

ここで白石が話しかけてきたらまた面倒事になるとこだった。

金曜のことは覚えてくれていたらしい。


オレの中で白石への好感度が少し上がってる中、HRが始まった。


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テスト範囲を終わらせるためにハイペースになった授業も終わり、放課後。


オレは帰ってダラダラすることを誓いつつ帰り支度をしていると、裕人と蒼井がやってきた。


「真、今日からテスト期間で部活が休みだから一緒に勉強しない?」

「黒田の家近いんでしょ?いいじゃん、ね?」


2人はオレと同じ中学なため、オレの成績をある程度知っている。

自慢じゃないが、勉強は得意だ。

というか1年1学期の中間テストなど、暗記系以外は中学レベルと何も変わらないし得意とか無いが。


そういった経緯でオレに勉強を教わりたいのだろう。

正直断りたいとこだがこいつらには何かと世話になってるし今日くらいいいか。


「仕方ないな。別にいいぞ」

オレは2人に了承の返事をする。

「ほんとに!?助かる〜。これで中間テストも安泰だ」

蒼井は声に出して喜んでいるが、裕人は驚いて声も出ていないようだ。


「どうした?」

裕人は呼びかけられてハッとして答える。

「いや、めずらしい…というか初めてじゃない?僕たちを家に入れてくれるのって思ってね」

なんだそんなことか。

「まぁ一人暮らしになったからな」

オレは無難に返答する。

「それもそうだね。ごめんね、取り乱して」

「気にすんな」

「それじゃあ早速黒田の家に行くわよ」


そういうことでオレたち3人は家に向かうこことになった。

教室を出る直前、白石と目が合ったような気がしたが気のせいだろう。


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「へぇ〜、意外と綺麗にしてるじゃない」

「ほんとにね、真は片付けを面倒くさがるものだと思ってたけど」

まったく…。

こいつらはオレをなんだと思っているのだろうか。

「1度散らかした方が後々面倒だろうが」


オレがそういうと2人は呆れたような顔でこっちを見る。


「はぁ〜…こういうやつだったわね黒田は」

「まぁしょうがないよ。これは簡単に治るものじゃないし」

なぜそこでガッカリするのだろうか。

考えても仕方ないが。

「そんなことはいいから早く始めるぞ」

そう言ってリビングのテーブルに2人を促す。


オレはキッチンに行き、3人分の飲み物を準備する。

裕人も蒼井もコーヒーが好き、というか紅茶が苦手なため、オレもコーヒーを飲むことにするか。

蒼井にはミルクと砂糖も添えてテーブルに持っていく。

苦いの嫌いそうだし。


そんなこんなでテスト勉強を始めることにした。


蒼井は数学、裕人は英語、オレは暗記物の現代社会を行うことにした。

現代社会は時事問題を出されると新しく勉強する必要が出てくるため、正直1番面倒かもしれない。

来年以降は社会は選択なので他の科目を選ぼう。


「ねぇ黒田〜、これどうやるの?」

「これはx+2を適当な文字に置き換えればわかりやすいはずだ。慣れたらそのままやればいい」

「真、僕もいいかな?この英文の意味が分からなくて」

「あぁ、これは直訳すると、『こぼれたミルクを嘆いても仕方がない』となるが、日本語だと覆水盆に返らずだな。今回の文なら取り返しがつかないってことだ。」

「なるほどね、ありがとう。急にミルクの話をしだすから意味わかんなくて」

このようにこいつらが質問してオレが答えるという感じになっている。


オレとしても迷惑なことないので快く受け入れる。

2人とも日頃は部活動で忙しいためあまり勉強していないが、根本的にやる気がないという訳では無い。

そのため、テスト期間になるとある程度真面目に取り組みはするのだ。

中学時代もこうして学校や図書館で教えたものだ。


そんなこんなで1時間ほど経って、休憩することになった。


誰が言い出したかは言うまでもないが、疲れたから休みたいとのことだ。


他愛もない話をしているとたまにはこうやって3人で過ごすのも悪くないと思えた。


「ところでさ〜、黒田って白石さんと仲良いの?」


ついさっきまでは。


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