閑話 黒田真との出会い (白石美優視点)
私は白石美優、この春から高校1年生になりました。
入学して1ヶ月経ち、多くの友達が出来て順風満帆の生活が送れているように見えるでしょう。
しかし、彼らには申し訳ありませんが私はあまり他人に興味がありません。
正確には無くなったというのが正しいでしょうか。
中学生にもなると、私への皆からの視線の感じ方が変わりました。
男の子からは下心が、女の子からも下心、もしくは嫉妬の眼差しばかりです。
高校生になってもそれは変わりませんでした。
仲良くしてくださってる方々はこのどちらかの視線を含んでいます。
もちろん全ての人がそういうわけではありませんが、下心のない方々はそもそも私に話しかけて来ないことが多いのです。
最初はこの人たちも同じかと落胆してしまいました。
ですが、クラスでたった1人私に興味のない人がいました。
黒田真くんです。
最初はどうして私に興味を持たないのか疑問に思いました。
自慢ではないですが、私はそれなりにモテます。
また、恋愛感情でなくともクラスメイトは一旦興味を持つものです。
それなので、とても不思議に感じてしまいました。
しかし、1ヶ月も経つと黒田くんは私だけでなく皆さんに興味がないのだとわかりました。
私の方も次第に黒田くんへの興味は薄れていき、また元の生活に戻りました。
そんな時に事件が起こりました。
なんと、私に万引きの冤罪がかけられたのです。
スーパーで買い物をしていると、見知らぬ商品が私のカバンに入っていました。
この時、スーパーで黒田くんと遭遇していたことから私は黒田くんを疑ってしまいました。
それと同時にこんなことをされてしまったことにひどく悲しみを抱きました。
翌日、先生にとても叱られ、私も反論したのですが証拠がないので取り合ってもらえず、停学処分を言い渡されました。
私は冤罪で停学なんて納得がいかなかったので、
「明日までに証拠を集めます!!」
と強く言ってしまいました。
少し冷静さを欠いてしまっていたようです。
その日の昼休みに、何か知っていることがあると思い、黒田くんを呼び出しました。
あの時は焦りもあった手前、黒田くんにはキツイ言い方をしてしまったかも知れません。
しかし、黒田くんは何食わぬ顔で、知らないと言いました。
よくよく考えれば犯人だとしたら正直に答えるわけありません。
もしかしたら私は心のどこかで黒田くんを信じていたのでしょうか?
そうして昼休みも終わり、放課後にはまたスーパーに行って監視カメラで確認をさせてもらいましたが証拠は出てきませんでした。
先生にあれだけ啖呵を切ってしまったので、処罰は免れられないだろうと思いその日は怖くて仕方がありませんでした。
そして今朝、思い足取りで学校に向かうとやはりと言うべきか職員室に呼ばれました。
私は覚悟して向かうと、なんと他クラスの長谷部さんという生徒が私に謝ってきました。
なんと長谷部さんが冤罪を押し付けた犯人だったそうです。
長谷部さんは証拠として先生に画像を見せていました。
私も確認させていただくと、そこには長谷部さんが私のカバンに商品を入れている所だったのです。
私はこの写真を見て、疑問が湧きます。
どうして長谷部さんが写っている写真を長谷部さんが持っているのか。
この写真は第三者しか撮ることができないはずです。
そして同時に新たな疑問が浮かんできます。
誰がこの写真を撮ったのか。
考えると、1人の男の子が浮かびました。
この場所、このアングル、写真をとれる人は1人しかいません。
すると私は、
「その画像、私にももらえませんか?」
と言っていました。
教室に戻ると、クラスの皆さんが私に口々に声をかけてくださりました。
ですが、私はそんなことよりも大事なことがあったのでつい教室の真ん中で黒田くんに声をかけてしまいました。
黒田くんには申し訳ないことをしてしまいましたがああするしかなかったのです。
そして昼休み、黒田くんを問い詰めました。
黒田くんは最初誤魔化そうとしましたが、私の追求に観念したのか事の顛末を話してくださりました。
話を聞いた私は黒田くんの優しさに驚きました。
長谷部さんという生徒はおそらく黒田くんとも仲良くないでしょう。
それならば停学にしてしまっても良かったはずです。
もしくは何もしないということもできたでしょう。
それにもかかわらず、私の冤罪を払拭してくださっただけでなく、長谷部さんの停学も防ぐという皆が不幸にならない方法をとりました。
口にはしませんでしたが、おそらく先生の方にも話をつけたのだと思います。
本人は面倒事が嫌だと言っていますが、長谷部さんを救いつつ先生にも根回しするこの方法の方が大変に決まってます。
おそらく全員が幸福になるやり方を考えてくれたのでしょう。
最初は何故あのスーパーの時点で止めてくれなかったのかと思いましたが、もしあの場で止めていたら今度は黒田君のいない所で似たようなことをされていたかもしれません。
あの1回で全てを解決してくださった黒田君には感謝してもしきれません。
それと同時に、黒田真という少年に興味を持ちました。
下心のない行動に私への興味の薄さ。
大抵の男性はここで何か交換条件を持ちかけてくる所ですが、黒田くんはそんなことありませんでした。
それどころか隠そうとまでするくらいです。
これからは黒田くんと沢山お話しようと私は心に決めました。
勿論、迷惑にならない範疇で、ですが。
昨日とは打って変わって明日は学校に行くのが楽しみです。
黒田くんと仲良くなる方法を考えましょう。
まずは連絡先を知るところからですね。
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