第10話大抵は、あんな感じさ
案内された場所は、西地区のさらに西側にある場所だった。
屋根の上から、ターゲットの家を見下ろす。
高い塀にかこまれた豪邸に住んでいるようだった。深夜だというのに、門番が二人いて警備は厳重と表現して良いだろう。
暗殺者ではなく、豪商が住んでいると言った方が説得力のある見た目をしていた。ここが貴族街であれば、防御魔法も使われて厄介であったのだが、スラムでそんなことまでするやつはいない。
見て目通り、強固な塀しかないと思って問題ない。
索敵が苦手な俺にとっては、ありがたい状況だった。
「派手な場所に住む暗殺者もいたもんだな」
「スヴェンのように、廃墟で一人暮らしているヤツの方が珍しい。大抵は、あんな感じさ」
恨みを買うからこそ、人を集めて身を守る、か。その用心深さが、ベテランと言われるまで生き残る秘訣なのだろう。
死んだらそれも運命、なんて思っている俺とは真逆の位置にいるな。
「子飼いの兵が10人程度いるみたいだが、問題ないだろ?」
「任せろ」
塀を乗り越えるの前に、数を減らしておこう。
ショートボウに矢をつがえて、連続で放つ。門番の脳天に直撃すると、二人とも声を出す間もなく倒れた。
「お見事」
現場に来ても陽気な態度は変わらずか。図太い性格だ。
小さく拍手するブラウリオに、ショートボウと矢筒を渡す。
「持っておいてくれ」
「あいよ!」
少しだけ身軽になったところで、屋根から飛び降りて、門の前に移動する。
予想通り鍵がかかっていた。
『閉ざされた扉を開け、アンロック』
ガチャリと音がでて、魔法の力によって解錠された。トラップに注意しながら、鉄製の柵状の門を小さく開き、体を滑り込ませる。
中には広い敷地があって、身を隠すような場所はなかった。
屋敷は暗く。外からでは誰かが起きている気配はないように見える。動物が放し飼いされている気配もないので、鳴子といったトラップを解除しながら先に進む。
無事に玄関前にまでついた。
ターゲットの暗殺者は二階の奥の部屋で寝ているとの話だったので、壁をよじ登り、魔法で閉ざされた窓をこじ開けると、物置になっている部屋に飛び込んだ。
モップやぞうきん、でかい麻袋が積み重ねられている。
音を出さないようにドアを開けて、ショートスピアを組み立てると、細い通路の奥に進む。ほどなくして、目的の部屋が見えた。
誰もいない。
ドアに耳を当てるが、物音一つしなかった。
寝ているのか?
『閉ざされた扉を開け、アンロック』
解錠してドアを少しだけ開く。怪しいものは見当たらない。部屋は暗く、数人の気配はするが動いているようには感じない。
中に入ってから、ドアを閉める。万が一、声が漏れたとしても、すぐ入ってこれないようにするためだ。
暗い部屋を進んだところで、部屋が急に明るくなった。
…………囲まれている。
それも10人近くにだ。襲撃を予想して、待ち伏せしていたのか。
全員が剣やメイスといった武装をしている。革鎧まで着ている男までいた。
「よう、遅かったな。歓迎するぜ」
目の前に立つ中年のハゲ男、ターゲットが言い放った。
両腕を開きながら、俺を見て嗤っている。
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