エロいキュウリ食ってご満悦でござる

 ――トゲトゲ一本づのである。稀代のトゲトゲ一本角であーーーーる。

 

 江戸の奉行が一声あげりゃ、たちまち広がる【Q棺婆】。燎原の火のごとく流行を走るThe Big n Green Dick.

 蝟集する藍棒あいぼうが街灯のように巷間に建ち並び、地に照らす淫靡なニュクス。深緑色のエックス

 生きる街シースラグは、碁盤の目のように道が連なり、犇き交わる。鳥瞰視点の精緻なグリッド、その奇勝のパッチワーク。

 格子の無数の交点に、それぞれひとつずつ、とぐろを巻いた導線で作ったマウンドが設置されている。往来のど真ん中に鎮座する無数の巻き糞は、それぞれの底から十字形に延びた導線で、直線状に隣り合う巻き糞と電気的エレクトリック接続ジョイントしている。

 それぞれのマウンドの上には、直立する緑のタワー。居丈高に建立された巨大ヒュージ胡瓜が、サイリウムのように緑光を放っている。

 母性ばばあの作ったぬか漬けソルティー胡瓜が、自らの塩分を媒介して、断末魔の光を放っているのだ!!!




 俺が生まれた頃にはもう、この街は味噌臭ェ靄の垂れこめている暗黒世界だった。

 救急車がぴーたらぴーたらとサイレンを鳴らしている。どこかで事故があったのだろう。どうせロクなもんじゃないだろうが。

 

 ――街の外じゃ、救急車はピーポーピーポーと鳴るらしいぜ!!

 

 ガキの頃、友達のニベアが言っていた。

 俺らの常識からすりゃ、救急車のサイレンはぴーたらぴーたらと相場が決まっている。何が根本的に違うかって、街の外の救急車のは、どうやら。街の外の救急車には、助手席に神妙に載り、「シ」と「ソ」の指でリコーダーを奏でる、あの奏で手がいないと言うのだ。

 

 ――それによ、街の外の救急車は、なんたって紅ショウガみてぇに真っ赤っ赤なんだとよ。


 カルチャーショックとはまさにこのことだ。俺らの世界で救急車のモデルといえばプリウスだ。あの静謐な鉄塊こそが、俺らの知っているambulanceなのだ。

 俺はニベアの野郎に訊いた。一体全体、街の外にはどれくらいの狂気と暴力が満ちていやがるのか、と。街の外には、どれだけの耳をろうせんばかりの騒音が鳴り響いていやがるのか、と。

 ニベアの答えは覚えていない。救急車はぴーたらぴーたらと、どこまでも一定の音階で叫んでいる。どこまでもどこまでも、優しい音で。


 ――六番通りの居酒屋で、押し入れの糠が爆発したらしいぜ。発酵しすぎたらしい。店主の顔に味噌っかすついて、もうダメかもしれねえな。


 リコーダーの音色に導かれて往来に飛び出した野次馬たちが、事故のヒントになるような言葉を少しずつ漏らしている。事情は何となく分かった。

 なるほど、糠の飛散物が店主の目にでも入れば、ことは重大なのかもしれない。しかし、多くの野次馬がそこまでの惨事を想像することすら恐れて、実際はもっと牧歌的なケースを念頭にもって『もうダメかもしれねえ』と言っているのだろう。店主の口元に糠がついている状況にさえ、彼らは恐れるのだ。それも、大いなる歔欷の合唱をもって!!

 舌なめずりをして終わるような些事だしょに。つける薬も無い。いや、つける糠も……。

 六番通りの居酒屋と言えば、レノアに違いない。店構えにでっかい横断幕――人間の猛き理性をオランウータンのような剛腕で殴り飛ばすようなあの悪辣なメッセージ――がある、あの居酒屋だ。


 ――母性を取り戻せ!!


 明朝体の文言の横には、乳房丸出しの女性がバストアップで描かれている。これでもかというくらいに身体の皺を強調している。明確に人間を骨抜きにする目的で、乳房が豊満に描かれている。老若男女、全てを包み込む肉の揺り籠だ。



 無数のキュウリは、各々が灯台のように光っている。だから皆、のこのこ此処へと帰ってくるのだ。

 だから俺は、この町の胡瓜を食いつくす。

 ルートはこうだ。


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エロイヨ キュウリ。そうだよ、胡瓜は、この上なくエロいのさ。



 ビリビリ痺れてきやがった。流石、導線に繋がれているだけあるぜ。ぬか漬けの刺激、れしたぜ!!



 この街を支配するのは、提督Aだ。奴に絶対の権限があるからこそ、この世界は母性の桎梏から脱却できないのだ。

 俺は、提督Aに宣戦布告をする。絶対に奴を殺すのだ。



 こうして俺は、提督Aの住まいに奇襲をかけるに至った。門の護衛はサイレンサー付の麻酔銃で一発、たちどころに眠らせた。弾丸は、これでもかってくらい塩で揉んだ。クセは無く、最高にYummyな味だったことだろうよ。



 提督Aは寝室で横になっていた。でっぷりと肥えた体に、豊満な肉の毬。俺でも堪らず勃起した。ヴィクトリアン調の瀟洒な寝具に、一本の大樹が育まれているかのような錯覚を覚えた。

 幹の木目は、乳房を彷彿とさせる深淵の渦巻き。葉の重なりは笠。梢の先まで母乳がぱんぱんに詰まっている。肥沃で、極上。垂涎のミルクだ。今すぐに……射精したい……。

 辛抱堪らず脱糞した。俺の臀部から、ウナギのような糞が千切れて飛び出した。ペルシャ絨毯に転がった粘性の高い腐葉土は、提督Aに新たな養分を与える。

 床の糞が、絨毯の柄の隙間に飲み込まれ、提督Aの身体がみるみる膨らんでいく。それも、均質な肉感を保ったまま。

 ああ、もう、ダメだ。



 俺は、自分の身体が青ざめ、みるみる変色していくのを感じた。陰部から、精液のように血が噴き出し、その身が萎んでいく。

 血管が血流に耐えきれず、イボを作った。陰部が緑になってるヨ。

 そうだ、俺の一物は、胡瓜になったのだ。



 地中深くで、ゆっくりと考える。ちんぽを味噌漬けにされ、極限まで地上に伸ばされている今この時を。

 同志よ。陽の光をチンポに食らい、電撃を浴びせられ、今、何を思うのだ。

 外の世界には、いったい何があると言うのだ。

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