エロいキュウリ食ってご満悦でござる
――トゲトゲ一本
江戸の奉行が一声あげりゃ、たちまち広がる【Q棺婆】。燎原の火のごとく流行を走るThe Big n Green Dick.
蝟集する
生きる街シースラグは、碁盤の目のように道が連なり、犇き交わる。鳥瞰視点の精緻なグリッド、その奇勝のパッチワーク。
格子の無数の交点に、それぞれひとつずつ、とぐろを巻いた導線で作ったマウンドが設置されている。往来のど真ん中に鎮座する無数の巻き糞は、それぞれの底から十字形に延びた導線で、直線状に隣り合う巻き糞と
それぞれのマウンドの上には、直立する緑の
◇
俺が生まれた頃にはもう、この街は味噌臭ェ靄の垂れこめている暗黒世界だった。
救急車がぴーたらぴーたらとサイレンを鳴らしている。どこかで事故があったのだろう。どうせロクなもんじゃないだろうが。
――街の外じゃ、救急車はピーポーピーポーと鳴るらしいぜ!!
ガキの頃、友達のニベアが言っていた。
俺らの常識からすりゃ、救急車のサイレンはぴーたらぴーたらと相場が決まっている。何が根本的に違うかって、街の外の救急車の
――それによ、街の外の救急車は、なんたって紅ショウガみてぇに真っ赤っ赤なんだとよ。
カルチャーショックとはまさにこのことだ。俺らの世界で救急車のモデルといえばプリウスだ。あの静謐な鉄塊こそが、俺らの知っているambulanceなのだ。
俺はニベアの野郎に訊いた。一体全体、街の外にはどれくらいの狂気と暴力が満ちていやがるのか、と。街の外には、どれだけの耳をろうせんばかりの騒音が鳴り響いていやがるのか、と。
ニベアの答えは覚えていない。救急車はぴーたらぴーたらと、どこまでも一定の音階で叫んでいる。どこまでもどこまでも、優しい音で。
――六番通りの居酒屋で、押し入れの糠が爆発したらしいぜ。発酵しすぎたらしい。店主の顔に味噌っかすついて、もうダメかもしれねえな。
リコーダーの音色に導かれて往来に飛び出した野次馬たちが、事故のヒントになるような言葉を少しずつ漏らしている。事情は何となく分かった。
なるほど、糠の飛散物が店主の目にでも入れば、ことは重大なのかもしれない。しかし、多くの野次馬がそこまでの惨事を想像することすら恐れて、実際はもっと牧歌的なケースを念頭にもって『もうダメかもしれねえ』と言っているのだろう。店主の口元に糠がついている状況にさえ、彼らは恐れるのだ。それも、大いなる歔欷の合唱をもって!!
舌なめずりをして終わるような些事だしょに。つける薬も無い。いや、つける糠も……。
六番通りの居酒屋と言えば、レノアに違いない。店構えにでっかい横断幕――人間の猛き理性をオランウータンのような剛腕で殴り飛ばすようなあの悪辣なメッセージ――がある、あの居酒屋だ。
――母性を取り戻せ!!
明朝体の文言の横には、乳房丸出しの女性がバストアップで描かれている。これでもかというくらいに身体の皺を強調している。明確に人間を骨抜きにする目的で、乳房が豊満に描かれている。老若男女、全てを包み込む肉の揺り籠だ。
◇
無数のキュウリは、各々が灯台のように光っている。だから皆、のこのこ此処へと帰ってくるのだ。
だから俺は、この町の胡瓜を食いつくす。
ルートはこうだ。
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エロイヨ キュウリ。そうだよ、胡瓜は、この上なくエロいのさ。
◇
ビリビリ痺れてきやがった。流石、導線に繋がれているだけあるぜ。ぬか漬けの刺激、お味噌れしたぜ!!
◇
この街を支配するのは、提督Aだ。奴に絶対の権限があるからこそ、この世界は母性の桎梏から脱却できないのだ。
俺は、提督Aに宣戦布告をする。絶対に奴を殺すのだ。
◇
こうして俺は、提督Aの住まいに奇襲をかけるに至った。門の護衛はサイレンサー付の麻酔銃で一発、たちどころに眠らせた。弾丸は、これでもかってくらい塩で揉んだ。クセは無く、最高にYummyな味だったことだろうよ。
◇
提督Aは寝室で横になっていた。でっぷりと肥えた体に、豊満な肉の毬。俺でも堪らず勃起した。ヴィクトリアン調の瀟洒な寝具に、一本の大樹が育まれているかのような錯覚を覚えた。
幹の木目は、乳房を彷彿とさせる深淵の渦巻き。葉の重なりは笠。梢の先まで母乳がぱんぱんに詰まっている。肥沃で、極上。垂涎のミルクだ。今すぐに……射精したい……。
辛抱堪らず脱糞した。俺の臀部から、ウナギのような糞が千切れて飛び出した。ペルシャ絨毯に転がった粘性の高い腐葉土は、提督Aに新たな養分を与える。
床の糞が、絨毯の柄の隙間に飲み込まれ、提督Aの身体がみるみる膨らんでいく。それも、均質な肉感を保ったまま。
ああ、もう、ダメだ。
◇
俺は、自分の身体が青ざめ、みるみる変色していくのを感じた。陰部から、精液のように血が噴き出し、その身が萎んでいく。
血管が血流に耐えきれず、イボを作った。陰部が緑になってるヨ。
そうだ、俺の一物は、胡瓜になったのだ。
◇
地中深くで、ゆっくりと考える。ちんぽを味噌漬けにされ、極限まで地上に伸ばされている今この時を。
同志よ。陽の光をチンポに食らい、電撃を浴びせられ、今、何を思うのだ。
外の世界には、いったい何があると言うのだ。
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